第一章
[2]次話
バッテラを知っているか
入社したてのサラリーマン本田秀一は初任給で寿司を食べに行った、梅田にある本格的な高級寿司屋だが。
その店では高校時代のクラスメイト上西正己がいた、彼は高校を卒業してすぐにその店に就職したのだ。
細い目で面長で口が大きい、短い黒髪で一七三位の痩せた身体を店の服と帽子で覆っている。その彼に挨拶した。
「初任給入ってな」
「うちに来たんだな」
「ああ、お前が働いてる店にな」
本田は笑って話した。
「来たよ、そしてな」
「うちの寿司食ってくれるんだな」
「ああ、それでな」
本田は笑顔で言った、長方形の顔で大きな明るい目で唇は薄い。黒髪を右で分けている一七〇程の少し太った身体でスーツを着ている。
「今からな」
「注文するか?」
「そうするよ、お前が握るか?」
「いや、俺はまだ修行中だからな」
上西は店のカウンターの中から答えた。木造の趣のある店内だ。
「まだな」
「それでか」
「お客さんに握ったの出すのはな」
それはというのだ。
「まだな」
「駄目か」
「ああ、俺よりずっと凄い人が握るから」
だからだというのだ。
「それ食ってくれよ」
「それじゃあな」
上西の言葉に頷いてだった。
本田は店長店の一番の板前の握ったものを頂くことにした、それで注文しようとしたがここでだった。
何を注文しようかと品書きを見てだ、笑顔で言った。
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