第133話『文化祭2日目』
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んです。ただ少し黒木先輩に話が──」
「あら、久しぶりですね。三浦 晴登君」
「げ、あなたは……」
終夜と話していると、その後ろから女子が現れる。白衣を身にまとい、眼鏡をクイッと動かすその仕草には見覚えがあった。忘れもしない。軽くトラウマになりかけている人物──
「『げ』とは失礼ですね。茜原 光。忘れたとは言わせませんよ?」
「忘れてないからこその反応ですよ……」
運動会での部活戦争が初対面の光。あの時は捕縛されるし、背負い投げされるしで散々な目に遭った。おかげで苦手意識が根強く残っている。
「それより黒木先輩、ちょっと話が」
「ここじゃ話せない内容なのか?」
「はい」
「……わかった。光、店番任せるぞ」
「はいはい。行ってらっしゃい」
「結月もちょっと待ってて」
「はーい」
結月と光を置いて、晴登と終夜は秘密の相談をするためその場を離れた。
そして残された初対面同士の二人。結月はあまり人見知りしないタイプではあるが、晴登が苦手そうにしていたので、光のことはちょっぴり警戒している。
「さて、貴女が結月さんね? 初めまして、私は科学部部長の茜原 光。以後お見知りおきを」
「み、三浦 結月です。よろしくお願いします」
「それで? ドリンクは買うの?」
「え? あぁ、どうしようかな……」
さらりと自己紹介が終わり、向こうはそのまま商売に移った。結月は流されるままに商品であるドリンクを眺め、思案する。晴登がいないのに勝手に買っても良いものか。
「ちなみに、血を分けてくれたら無料でいいわよ」
「無料! ……って、え? 血ですか?」
「そう、血。実験のために血を集めてるの。献血だと思ってくれればいいわ」
献血といえば他人に血を分け与えるのが目的だが、彼女は実験のためだと言った。果たしてどんな実験に使われてしまうのか。結月は訝しげに光を見つめる。
「そんな目で見ないで。私は真面目なの。それにほんの少しの量で良いの。注射も痛くないから」
「じゃ、じゃあお願いします……」
少しなら良いかと、半ば流されるように結月は血を提供することを承諾した。その後、光に渡された用紙に名前を記入すると、その場で注射が行われた。結月は注射が初めてだったが、光の言う通り全く痛くなくて、献血はすぐに終わった。
「はい、ご協力ありがとう。じゃあドリンクは持って行ってちょうだい」
「あ、ありがとうございます」
本当に血を分けたらドリンクが無料で貰えたので、若干不安になりながらも、結月は机の上に乗っていたドリンクの入った紙コップを手に取り、中身をじっくりと見る。
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