第三部 1979年
戦争の陰翳
夏日
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使から再三の提案がなされたが、アーベルを通じて日本側に連絡し、その提案を下げさせた経緯があった。
そこで日本側は宣伝戦ではなく、将軍個人による引見を希望したという形をとることにした。
(引見とは、身分の高い人間が身分の低い人間と会う事を示す言葉である)
日本との関係拡大を願っているのは、東ドイツ側である。
すでに日本の大手ゼネコンによる東ベルリンの再開発や、合弁会社による半導体工場の建設などが決まっている。
もしここで日本側から資本を引き揚げられたら、困るのは東ドイツである。
将軍の鶴の一声で、合弁事業が中止になれば、日本からの技術導入が不可能になる。
合弁事業を進めている大規模集積回路以外にも、東ドイツが必要としている技術は多数ある。
小規模な基地局を経由する無線電話を始めとする高性能な通信機器や、最新鋭の自動車生産設備。
どれを一つとっても、今後の経済発展には必要なものばかりだ。
日本との友好関係は、長い目で見なければならない。
その為に、将軍からの無体ともいえる要求を受け入れざるを得なかった。
そこで、送り出しても一番実害の少ないアイリスディーナが、カッツェ中尉と共に選ばれたのだ。
彼等は、戦術機部隊のメンバーとして訪日することが、軍指導部によって決められた。
「そういう事情ならば、日本に行きます」
カッツェは微笑を浮かべ、返答した。
「このような機会がなければ、日本の首都を訪れるなど、二度とないかもしれません。
ましてや国家元首に会えるなど、望外の僥倖です。
カッツェ中尉以下、喜んでご招待に与ります」
「そう言ってくれると助かる」
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