第三部 1979年
戦争の陰翳
夏日
[4/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
なる敵から……」
「答えなくて良いぞ」
ゾルンは、空軍大将の声と態度で、アイリスディーナの声を遮った。
老将の声は、そこが第1防空師団長室ではないかのように、堂々と響いた。
「要するに、君は国家と軍に忠誠を誓っているという態度は本物だという事だろう」
「その通りであります、同志ゾルン大将。
このアイリスディーナ・ベルンハルト少尉が、絶対の自信をもって確約いたします」
「よろしい!
私は、第一航空戦闘団の同志たちに全幅の信頼を置いている」
ゾルン大将が沈黙する間、アイリスディーナに遅れて、オズヴァルド・カッツェ中尉が入ってきた。
彼は、病気療養中のハンニバル大尉の後任として、大隊長代理についていた。
「強行軍で済まないが、同志ベルンハルト、同志カッツェの二人には明日中に東京に飛んでもらう」
カッツェが入室した頃合いを見て、それまで黙っていたシュトラハヴィッツ中将が口を開く。
「同志カッツェ、ちょうどよいところに来た。
君には、同志ベルンハルトと共に東京サミットの随行員として参加してほしいと同志議長から下命があった。
これは東西融和の一環と思ってくれればいい。
また向こうの政威大将軍御自らが東独軍の英雄にお会いになりたいとご所望になられている」
東独軍のソ連派遣部隊である第1戦車軍団の評判の高さは、ワルシャワ条約機構だけではなかった。
砲弾やミサイルが少ない状況下で光線級を撃破し、航空爆撃を可能とした光線級吶喊を行った部隊の名前は広く知れ渡っていた。
「随行員として参加し、向こうのショーグンとお会いできるのは、大変この上ない名誉と心得ますが……
僭越ですが……本官が行ってどうにかなるのでしょうか」
カッツェは、恥じ入って言う。
「同志カッツェ中尉、実をいうとな、私も君の考えに賛成なのだ。
完熟訓練も終えていない衛士を、そのような国際会議の場に引っ張り出すのはふさわしくない」
アイリスディーナが、めずらしく不機嫌な顔をしているのが気が付いた。
だがシュトラハヴィッツは穏やかな口調で、この若い少尉を諭すことにした。
「私としては、心苦しいのだが、しかし日本政府の要請を断れば、今後の国際関係に傷をつけかねない事態になる。
東西融和を行い、友好関係を保つのも、また祖国のためになるのだ。
これも任務だと思ってほしい」
シュトラハヴィッツは、若い将校たちにこれまでの交渉経緯を詳らかにした。
この話の四日前、東独政府首脳に秘密裏に日本大使が接触した。
そこで対ソ宣伝煽動として、東独軍精鋭であった第40戦術機実験中隊の関係者の訪日を要請されたのだ。
だがシュトラハヴィッツは、衛士たちの機密保護という観点から、その提案を固辞した。
大
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ