人形劇
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「終わったァ……」
「終わりました……!」
ようやく書類が片付いた。
ハルトとえりかは同時に、大きくため息を付いた。
「お疲れ様です。松菜さん」
「うん。お疲れ、えりかちゃん」
えりかはハルトの返事に頷き、ゆっくりと研究室の奥へ向かっていく。そのまま教授へ報告に向かったのだろう。
彼女を横目で見送りながら、ハルトは結梨の前で膝を曲げる。
「結梨ちゃん、そろそろユニコーンを返してもらっていい?」
「……」
ハルトの言葉に、結梨はハルトとユニコーンをそれぞれ見やる。
「はい……」
結梨は残念そうに、ハルトへユニコーンを差し出した。
彼女の手からハルトの手へ飛び移ったユニコーンは、すぐさまその体を消滅させた。
結局ほとんど手伝ってもらえなかったなと思いながら、ハルトは残ったユニコーンの指輪をポケットに入れる。
「お兄ちゃんお兄ちゃん! 魔法っていっぱいあるの?」
すっかり好奇心に駆られた結梨は、目を輝かせた。
「まあ、色々あるよ。そうだな……」
魔法をあれこれ使っても、結梨には伝わらない可能性がある。もう少し子供の視覚的に分かりやすい物の方がいいだろう。
『コネクト プリーズ』
ならばと、湾曲の指輪を発動。生成された魔法陣に手を伸ばし、ここ最近ご無沙汰していた大道芸の用品を引っ張り出した。
「……お人形さん?」
結梨は首を傾げた。
ハルトの手にあるのは、ボロボロの人形。ピエロを模したそれを地面に放る。そのまま床に無造作に手足を投げ出しそうになるが、空中でそれは跳ね、直立する。
「おおっ!」
結梨の目が光り輝く。
ハルトはそのまま、魔法陣の先で即座に手に括り付けておいた糸で人形を動かしていく。お辞儀をして、バレリーナーのように体を回転させる。
「すごい!」
結梨はさらに目を大きく上げる。
人形は少しずつ結梨の手を伝い、腕に上がっていく。
「お……おお……っ!」
声を震わせる結梨。
少し、驚かせてみようか。
ハルトは薄っすらと、目を赤くする。すると、手から少量の魔力が人形へ伝達する。ハルトの魔力が人形を内側から空中へ跳ね飛ばす。
すこしぎこちない動きを繰り返しながら、人形は結梨の肩に登っていく。
「すごい……!」
「まだまだいけるよ」
ハルトの魔力を受けた人形の動きは、もはや人形劇の動きに留まらない。
結梨の両肩を交互に飛び交い、やがて大きくお辞儀をした。
「おお……」
結梨は丸い目で、人形の動きを凝視している。
人形はそのまま、アクロバットな動きを繰り返しながら、結梨の体の上を跳びまわる。
彼女の目の前でアーチを描きながら、人形は大き
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