人形劇
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く跳び上がる。そのまま彼女の頭上に着地し、体を回転させながら彼女が思わず差し出した手に着地した。
「す、すごい……!」
声を震わせる結梨。
一通りの人形劇を行ったハルトは、そのまま手を大きく振るう。人形は大きく体を跳ねさせ、ハルトの手に収まった。
「はい、おしまい」
「すごかった! お人形さん、すごい動いてた!」
興奮した様子の結梨に目線を合わせながら、ハルトはその頭を撫でる。
「ありがとう。……最近忙しくて、あまり大道芸やってなかったな……」
「もっといっぱい見たい!」
「うーん、それじゃあまた今度ね。今度公園でもやるから、見に来てね」
そう言いながら、ハルトは久しぶりに見滝原公園で大道芸を行うことを想像していた。
最後にあの場所で大道芸を披露したのはいつ頃だっただろうかと思い返していると、ドアからノック音が聞こえてきた。
「はい」
えりかの声が、ハルトを通り過ぎていく。
彼女が研究室の入り口を開けると、壮年の男性が姿を現した。
「やあ、蒼井君」
「こんばんわ、市長さん」
来客である市長を迎え入れたえりか。
市長の姿を見た途端、しゃがんでいたハルトの背筋に戦慄が走った。
ゆっくりとした足取りで研究室に入り、市長は立ち上ろうとするハルトを見下ろしていた。
「君は確か……松菜君、だったね? 教授の助手をしている……」
市長。
彼もまた、ハルトと同じく頻繁にこの研究室に出入りしている。
何でも教授とは旧知の仲らしく、お互い社会的地位を得た現代でも交流を続けているのだという。
(この人、少し苦手なんだよな……)
にっこりとした笑みをしたままの市長。だが、その顔を見るだけで、ハルトの胸中にはそこはかとない不安が芽生えてしまう。
「何でも、蒼井君に色々と協力してもらうために、教授を手伝っているそうだね」
「ええ……まあ……」
体が震える。
これは、恐怖なのだろうか。
ハルトの声は少しずつ細くなっていく。
人間なのに、ファントムを怯えさせるほどの目力。
「ふむ。この研究室……というより、教授には慣れたかね? なかなか見ない数奇な人物だろう?」
「確かに、ちょっと変わった人ですけど……慣れては来ましたね」
ハルトは何とか顔に平静を張り付けながら受け答えを行う。
少しでも変に思われてはいけないと感じながら、ハルトは中央の来客用テーブルに市長が座るのを見届ける。
「お待たせしました」
そこへ、えりかの声が届く。
彼女は、丁寧な動きで市長の目の前にお茶を出していた。
「おお、ありがとう」
市長はほほ笑みながら、差し出されたお茶を受け取る。
「蒼井君。教授はいるか
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