第四章
33.ロンダルキアの夜
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な軌道――。
その人物も距離を取ろうと後ろに飛んだが、そこまでも正確に読んでいたかのように、振られた槍先が仮面を捉えていた。
外れて飛んだ仮面が乾いた音を立て、石の床に転がる。
「持病の仮病でのう」
「……!」
ヒースの予測は的中していた。
仮面の下の素顔は、ザハン支部の残党を引き連れてロンダルキアへとやってきていた、祈祷師ハンソンのものであった。
「ケイラスの『フォルが留守の間に神殿で何が起きてもおかしくない』という言葉がどうも引っかかっていての。誰か尻尾を出すやもしれぬと思うて、密かに毎日ここに来ておった」
「……」
「悪魔神官ハゼリオ殿の遺した資料を読みたいだけなら、フォルに許可をもらって昼間に堂々と読めばよい。わざわざ夜に、大きな袋に詰めて、コソコソと、外に……まあ言い逃れはできぬな。資料をどこに持っていこうとしたのか、いや、そもそもおぬしらはどこの勢力から依頼されてこのロンダルキアに来ていたのか。是非とも聞かせてもらいたいのお?」
祈祷師ハンソンはその問いには答えなかった。
しばし沈黙したあと、笑い出した。
「あの不人気ナンバーワン祈祷師の言うことを真に受ける魔物がいらっしゃったとは。恐れ入りました」
「伊達に長く生きておらぬのでな。見る目はあるつもりじゃ。あやつの意見については、妙に感情的になるロトの子孫絡みのことやフォルについてのこと以外は一考に値すると思っとる」
フォルが大変じゃろうから、もう少し他の者と仲良くやってほしいがの、と、ぼやいて苦笑いする。
「で、どうなんじゃ。どこの差し金かのう」
「お答えするとでも?」
「あまり手荒なことはしたくないがのお」
「ほう。屈強な種族とはいえ、ご老体だけで我々手練れ五人を同時に相手ができますか」
ハンソン以外の四人が、荷物を置いて杖を一斉に構える。
着ているローブは魔術師のものであったが、不釣り合いにも程があるような洗練された構えだった。
「今この場には他に誰もいませんよね。証人がいないなら、あなたを消せば事実など私たちでいくらでも作れます」
「フム。確かに今この場にはわししかおらぬが、イオナズン一発でも撃てば誰か来るじゃろうて」
「誰かが来る前に片づけますよ」
ハンソンも宝玉の付いた杖を構え、呪文の詠唱に入ろうとした。
ところが。
「あの、いちおう証人は、います」
やや遠くの柱から、そんな声が聞こえた。
あまりにも意外だったために、その場にいる全員が驚いた。
柱の陰から現れ、頼りない足取りで老アークデーモンのもとにやってきたのは、一人の魔術師だった。
「む? おぬしは?」
「ベラヌール支部所属だった者です。デルギンスと申します」
「ずっとあっちの柱の
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