第一章
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利休風流
千利休が天下人となった豊臣秀吉に仕える様になって暫く経った。ある日秀吉の弟である秀長がその利休にこんなことを言った。
「兄上はあることを望まれています」
「といいますと」
「風流が見たいと」
秀吉がこのことを望んでいるというのだ。
「その様に望まれています」
「まことの風流をですな」
「近頃確かに風流が流行っていますが」
泰平が近付きそうなっていた。まだ関東には北条、東北には伊達もいるが九州は平定され既に徳川家康も下っている。
天下は間違いなく泰平に近付いていた。その中で人々は次第に戦から楽しみにその心を向けていってきたのだ。
それで風流も流行っていた。だがだったのだ。
「ですが巷の風流は風流ではない」
「少し違いますな」
それはその通りだと利休も答える。
「勘違いがあります」
「はい、何かが違いますな」
「私もそう思います」
利休は穏やかな声で述べていく。茶の者らしくそこには乱れたものは何もない。大柄な身体だがそこに威圧的なものは何もない。
ただそこにある、そうした自然なものの中で秀長に対してその穏やかな口調でこう言うのである。
「まことの風流は少し違いまして」
「ではその風流を兄上に見せて頂けますか」
「私の思う風流であれば」
「利休殿が思われるものなら」
それならと秀長はすぐに利休に答える。
二人は今小さな茶室の中にいる。秀長はその茶室の中で利休が淹れた茶を飲みながら彼に対して相談しているのだ。
「間違いはありませぬ」
「そう言って頂けますか」
「実際にそうだと思いますが」
「買い株りかと。ですが」
「見せて頂けますな、兄上に」
「畏まりました」
利休は淡々とした調子で秀長に答える。かくして。
秀吉は利休にまことの風流を見せてもらうことになった。彼は秀長からその話を聞き満面の笑みでこう言った。
「流石じゃな。それではじゃ」
「利休殿の風流を御覧になられますか」
「そうしようぞ。ではな」
「はい、それでは利休殿が招かれた時にです」
「その時にか」
「利休殿の下に参りましょう」
「そうじゃな。それではな」
秀吉は自身が最も頼りにしている弟の言葉に笑顔で頷く。彼にとって秀長はただの弟ではなく第一の臣であり相談役でありまた名代でもある。それだけに最も信頼し頼りにしているのだ。
彼の言うことなら異論はない、だからこそ頷いたのである。
頷きそのうえで利休の招きに応じ秀長と共に彼の言う場所に赴くことにした。彼はそのことが決まってから秀長にこんなことも言った。
「それはそうとしてじゃ」
「何か」
「寒くなったのう」
急にその身体を縮めて寒がる仕草をしてみての言葉だった。
「近頃めっきりな」
「
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