第三部 1979年
迷走する西ドイツ
卑劣なテロ作戦 その2
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ものである。
クロワッサンが外したかと思った瞬間、戦術機の多目的追加装甲に火焔が躍った。
一拍置いて炸裂音が響き、黒煙が上がる。
手投げ弾の一発が当たって、爆発したのだ。
期せずして、テロリストたちの間に歓声が沸き起こり、こぶしを突き上げて、喝采した。
その声を標的にしたかのように、トラックの近くに銃火が閃いた。
別な戦術機が、応射をしてきたのだ。
腹に応える様な砲声が、周囲に響く。
20ミリ突撃砲のそれとは違う発射炎が煌めいた。
モーターに似た鋭い飛翔音が響き、M54トラックの正面や左右に爆炎が躍り、泥と土煙が飛び散った。
GAU-8 アヴェンジャーから出る30×177ミリ弾が通り抜けるや、周囲の地面が吹き飛ばされ、テロリストたちは苦鳴を発して倒れていく。
砲火を発していたM2重機関銃は、閃光と共に木っ端みじんとなり、機関銃手は朱に染まって倒れる。
バズーカ砲や、迫撃砲、重機関銃が随所で爆砕され、沈黙を強いられていく。
鋭い爆発音とともに火焔が躍り、RAFのトラック20台は、金属製のたいまつに代わった。
首領のルディ・ドゥチュケは、少数の手勢と共に脱出した。
火焔で全身が燃える部下たちを見捨てて、命からがら、近くにあったワーゲン・ビートルに乗り込む。
ライトをつけ、エンジンをかけると、そのままオーストリー方面に向かった。
RAFの一群を襲った中に、例の白い機体はなかった。
みな銀面塗装で、国籍表示のない戦術機……
米軍のファントムと、見たことのないずんぐりむっくりとした機体だった。
他に戦術機がいた様子はなかったから、手ごわいと思って撤退したのか……
走るビートルの後ろ上方から、地上に向かって黒い影が伸びた。
路面の影を見て、ドゥチュケの喉から悲鳴じみた声が漏れた。
「ああああ!!……」
最初に見た戦術機よりもはるかに大きな機影だ。
まっしぐらに、こちらに向かっている。
後部座席に乗っていた部下の一人が、サンルーフから身を乗り出す。
携帯用バズーカのM72 LAWの砲身を伸ばし、肩に担ぐ。
轟然たる砲声が上がり、戦術機の頭部に閃光が走る。
戦術機は砲撃をものともせずに、突き進んで来る。
この車に突っ込んでくるつもりなのだろう!
「撃ちまくれ!近寄らせるな」
その号令と共に運転手以外の人間は、ピストルや小銃でめいめいに攻撃を始める。
胸部装甲や肩に火花が散るが、阻止するには至らない。
巨大な機体は、銃弾を蹴散らすようにして突っ込んでくる。
やがて地響きと共に、戦術機が道路に乗り上げてきた。
呆然とするドゥチュケ達の前に、戦術機から二人の男が下りてきた。
先に出てきた男は、半袖シャツを身に着け、ベルボトムのジーンズ
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