第三部 1979年
迷走する西ドイツ
卑劣なテロ作戦 その2
[5/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
網の目の様なスパイ網を構築し、日独に対して、秘密作戦を実施した。
ことに、防諜機関も防諜法もない日本に対して、合法、違法を問わず苛烈な有害活動を行った。
その明朝。
ベンドルフ郊外のザイン城には、複数のボンネットトラックが向かっていた。
ドイツ連邦軍のトラックに偽装した20台の車列には、武装したドイツ赤軍のテロリストおよそ250名。
白いヘルメットにRAFとの黒い文字を書き、誤射を防ぐために赤い星の書かれた白地のゼッケンをつけていた。
そして身に着けた木綿製で紺地のプルオーバーのヤッケとオーバーズボンの下には、それぞれ私服を着ていた。
マサキにつかまった際に民間人だと言い張るためであり、また逃亡しやすくするためでもあった。
それは、国際法で否定されていた便衣兵という存在そのものであった。
運転席に座っていたRAF戦闘員のヴォルフガング・グラムスは、激しい機械音に気が付いた。
年代物のM54 5tトラックのエンジンとは明らかに違う音だ。
「もしや……」
今日は、早朝からの濃霧だ。
視界は、全く悪い。
車のライトで、2メートル先の道路がかろうじて見えるほどだ。
「どうした」
「爆音らしきものが聞こえます」
部下の報告に気づいたのであろう。
訝しげな声をかけた部隊長のクラウス・クロワッサンに、大声で声をかけた。
クロワッサンは、耳をそばだてた。
前方からは激しいエンジンの音が伝わってくるが、その音に混ざって遠くよりジェットエンジンらしい響きが聞こえてくる。
「間違いなさそうだな」
クロワッサンは、頷き、携帯型の無線機を取り上げた。
「こちら一号車から、各車両へ。
爆音らしきものを確認。
目視不可能なれど、敵の戦術機と思われる」
グラムスは、車を路肩に止めると、荷台に飛び乗った。
荷台の幌を外すと、M33対空2連装機関銃架を準備する。
敵の姿は依然肉眼で炉らえられないが、爆音はそれまでよりもはっきり聞こえる。
「射撃準備!」
誰かが叫んだ。
二連装のブローニング機関銃が空に向けられる。
12.7ミリの銃弾は、至近距離から射撃すれば、F−4ファントムの分厚い装甲板を穿つ能力をもつ。
霧の中より浮かび上がる戦術機の姿を見た。
「戦術機です。敵です!」
「何をしている!撃て」
号令一下、20台のトラックから一斉に銃砲が火を噴いた。
重重しい発射音と共に、赤い線が一直線に戦術機に向かって飛ぶ。
続けざまに手投げ弾と火炎瓶が投げつけられ、火焔と黒煙が上がる。
沸き起こる炎が、戦術機を照らし出す。
グラムスと数名のRAFのテロリストは米軍製の手投げ弾を投げる。
駐留米軍から横流しで手に入れたマーク2手榴弾で、形からパイナップルと呼ばれる
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ