第三部 1979年
迷走する西ドイツ
卑劣なテロ作戦 その1
[5/5]
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
ら、マサキに近寄るのは不審には思わなかった。
だが、今、突如として現れた天のゼオライマーには、恐ろしい疑念がわいた。
忌々しい黄色い猿。
殺してしまわないと、また襲ってくる。
そう思ったからオルフ達は、この機に乗じて、どこまでも追いかけることにしたのだ。
バスティアンは、オルフがゼオライマーの恐ろしさを知らないことを、却っていぶかり顔にいう。
「木原は人間じゃない、奴は悪魔だ。
人間に悪魔が殺せるのかね。
全学連とかなんだかしらないけど、彼らに木原は殺せないぞ!」
ドゥチュケは、もう勘弁ならぬという顔を示して、バスティアンをねめつけた。
オルフは、ドゥチュケを利用したいがために、弁護した。
「今話題の、ヒッピー集団、緑の党に加入戦術を進めている、ドゥチュケ君は優秀だ。
左翼学生運動活動家の信任も厚い。
左派の票を取り込むことが出来れば、CDUに勝てる。
私の議員としての再選は確実だ。
といっても、SPDの君たちの協力があってこそだ」
緑の党は、2020年現在、ドイツ議会に118議席を持つ第三の政党である。
環境意識の高まった1970年代末期、主に右派や保守派が中心となって、環境グループを組織した。
そこに毛沢東主義者や、1968年の学生運動に関わったドイツ国内の左派グループも参加し始めた。
この加入戦術は成功し、1979年11月4日の党大会で左翼過激派の加入が認められるほどだった。
党を組織した右派は、過激派の参加を拒んで反対動議を提出したものの、僅差で否決されるほど浸透されていた。
1980年1月13日の党大会での結党メンバーには、件のルディ・ドゥチュケも名を連ねた。
するとバスティアンは、そういう種類の男が、何を目的にうろついているのか、元より知っているので、
「このヒッピー野郎、帰れ」
ルディ・ドゥチュケは、他にも、機嫌のわるいものが胸にあったところとみえて、怒鳴った。
「うるせぇ!スケベ爺。
この、色きちがいが!」
あわてて、オルフは、反目しあう二人をなだめた。
自分が当選するまでは、緑の党は必要なのだ。
もしマサキに負けても、ルディ・ドゥチュケは極左の活動家だ。
マサキに消してもらえばいい、としか思っていなかった。
「そう反目せずに、私に力を貸してくれ。
栄光あるドイツのために!」
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ