第三部 1979年
迷走する西ドイツ
卑劣なテロ作戦 その3
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久を、ドイツ婦人と勘違いした為であった。
バスチアンの家は、ボン郊外の静かな住宅街にあった。
都合がいいことに、公園があったのでゼオライマーを着陸させ、愛人宅の様子を見ることにした。
しばらくすると白のオペル・カデットが家の前にとまり、30代と思われる女性が下りた。
人妻風の女は周囲をきょろきょろ見た後、玄関ドアに消えた。
マサキには閃くものがあった。
あれはおそらくバスチアンと同棲している緑の党関係者だ。
マサキがドイツ赤軍とドゥチュケを殺したことを知って、慌ててきたとなればつじつまが合う。
足は自然とバスチアンの家に向かった。
念のため裏口に回ると、どういう訳か、外に設置してある焼却炉が燃えていた。
という事は、燃えているのは秘密文書で、裏口は空いているはずと思った。
ドアノブに手をかけると、裏口は空いており、簡単に中に入れた。
美久に秘密文書の確保を指示した後、屋敷に忍び込んだ。
家に入って間もなく、奥の部屋から男女のこもった会話が聞こえてきた。
「閣下ったら、いやねえ」
女の媚びた声がドアの隙間から漏れる。
「お前を見た瞬間、ほれ、この通りさ!」
「恐ろしいわ……」
マサキは思い切って、隙間から覗いた。
薄着の男女が顔を寄せ合い、キスをしていた。
頃合いを見て、マサキは物陰から姿を現した。
その際、わざと足音を立てて接近する。
バスチアン達は、同時に振り向いて、ギョッとなった。
「なんだ、お前は……」
持って来たポラロイドカメラのフラッシュをわざとらしく焚く。
バスチアンは醜い表情をすると、愛人の背後に隠れて、マサキを睨んだ。
「乱暴するつもりはない。
ただ、ドイツ国防軍将軍のアンタに話があってきた」
言葉を切ると、タバコに火をつける。
「それにしても、思わぬものを見て驚いているのはこっちだよ。
それからバスチアン将軍に、奥さん。
さっきみたいに、堂々とすればいいんだ」
「警察をよぶぞ!」
バスチアンの顔色は真っ赤だ。
「その前にアーペル国防相か。あるいは軍事情報局かな。
いやいや、ボンにいる大統領でもいいし、その政権与党であるSPDでもいいか……
どっちにする?」
するとバスチアンは女と顔を見合わせて、今にも泣きだしそうになった。
「あんたは一体誰なんだ!」
バスチアンは恐る恐る切り出した。
「俺は木原マサキ。天のゼオライマーのパイロットさ。
条件次第によっては、アンタらをKGBから守ってやってもいい」
「本当か」
死んだ魚のように濁っていたバスチアンの目にかすかに光が宿った。
狡猾さを感じさせるような、悪魔的な輝きだった。
マサキの方は、もっと邪悪な考えだった。
「簡単さ。
緑の党と平和団体にいるKGBスパイとシュタージの
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