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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
XV編
第209話:届かぬ説得
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政府を疑うべきなんじゃないかと思ってる」
「えっ!?」

 まさかの答えにセレナも思わず言葉を失う。ガルドは咄嗟に彼女の唇に人差し指を当ててそれ以上彼女が声を発する事を押さえさせた。思わぬ内容に驚きを隠せないセレナであったが、唇に触れた彼の指の感触に我に返ると口を閉ざし小さく頷く。それを見て小さく息を吐いたガルドは、軽く周囲を見渡して聞き耳を立てているような者が居ない事を確認すると少し声を落として自身の考えを口にした。

「勿論、政府関係者全員を疑ってる訳じゃない。特にツバサの父親のヤツヒロなんかは除外しても良いだろう」
「じゃあ、誰が……?」
「……風鳴 フドウ」

 ガルドが疑っているのは風鳴機関と表立って動かない訃堂であった。直接目にした事のない相手ではあったが、何度か発令所のモニターで弦十郎と話しているのを見た限りでは訃堂はかなりの過激派に属する人間だとガルドは思っている。実際彼は神の力を取り込んでしまった響を躊躇なく殺処分しようと自衛隊を動かした。装者でありS.O.N.G.の重要な戦力の1人でもある、立派な日本国国民である筈の響を相手にしてである。日本と言う”国”の為であれば自国民であろうと容易く犠牲に出来る、その非情さと野心を感じさせるあの眼光を見て、ガルドは危険な何かを感じずにはいられなかった。

「今まであの男が俺達に直接何かをしてきたと言う事は無い。ヒビキに対しても、俺達に対してと言うよりはヒビキ個人に対しての処分だったと思う。だが、それでも俺はあの男を信用しきる事が出来ない。何時か背中から撃たれるんじゃないかって言う、そんな漠然とした不安がどうしても拭えなくてな」
「それで、今回の事も疑ってるんだ……」

 セレナの言葉にガルドは神妙な面持ちで頷いた。無論、背中から撃たれたと言うだけなら何とかする。だがガルドが本当に心配しているのは、自分の事ではなくセレナの事であった。

「もし俺がここを離れている間にセレナに何かあったらと思うと……な」
「ガルド君……」

 その言葉にセレナは嬉しさを感じると同時に情けなさと申し訳なさを感じずにはいられなかった。相変わらず、自分は彼らにとってただの守るべき存在でしかないのだ。彼らの負担となっている、あの頃から何も変わっていない。もうベッドから出て、自分の足で歩き回っても何も問題ないと言うのにである。何の力もないこの身が恨めしくて、悔しさに泣き崩れてしまいそうになった。

 しかしセレナは強い女性だ。己の弱い部分に負ける事無く気丈に笑みを浮かべると、彼女はそっと彼の手を掴んだ。

「ガルド君、ありがとう。……でも大丈夫だよ。もし何かあっても、自力で逃げるくらいは私にもできるから。あの頃とは違うもん。だからそんなに心配しないで……ね?」

 白くしなやかな、
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