第四章
35.ラストチャンス
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祈祷師ケイラスの放った大きな炎が、サマルトリアの王子・カインの体を包んだ。
「ふーん。祈祷師がベギラマね」
彼は盾で炎を受け、ダメージを軽減させていた。
その間に、戦闘要員ではないタクトは後ろに下がり、フォル、バーサーカーの少女・シェーラ、若アークデーモン・ダスクの三人はベギラマを警戒して広がる。
しかし、そこから三人がそれぞれ一斉に攻撃を仕掛けようと各々武器を構えたところで、意外な方向からストップがかかった。
「待て。君たちは手を出さないでもらおう」
「へえっ!?」
共闘を拒否したのはケイラスである。フォルの裏返った声が洞内に響いた。
「いや、ここはみんなでいかないと」
「お前死ぬぞ」
フォルとシェーラから同時にその無謀さを指摘されるも、「大丈夫だ」の一言で取り合わず。
「こっちはまとめて来てくれてかまわないけど?」
さして興味もなさそうに細身の剣を構えるサマルトリアの王子。
ケイラスは杖を彼に向けた。
「私はベラヌール支部の生き残りだ。我々支部員への大量虐殺を忘れてはいまい? ある者は首を両断され、ある者は心臓を貫かれ、ある者は仮面もろとも頭部を割られ、そしてある者は呪文で焼かれ。血と悲鳴が乱舞するその様は地獄絵図だった」
「あー、なるほど」
ベラヌールで戦いがあったこと自体は、この緑の魔法戦士の記憶にもあったようだ。
「私は兄弟で入信していた。兄は次期地区本部長候補と言われるほど優秀な妖術師で、皆に尊敬されていた。その兄を……お前たちは私の目の前で斬り殺したのだ」
「それはご愁傷様。でも、やらなきゃやられる。マホトーンが効けばいいけど、効かない信者についてはどうしようもない。というか、僕らは襲われた側なんだけど?」
「私は復讐のために必死に修行し、独学でベギラマを覚えた。お前には死をもって償ってもらおう」
「話かみ合ってないね。まあ、どうぞ」
またケイラスがベギラマを唱える。
サマルトリアの王子も剣にベギラマの炎を纏わせ、それにぶつけた。
威力が違いすぎた。
「ケイラスさんっ!」
空中でぶつかり合ったベギラマの絶望的な火力差に、叫ぶフォル。
サマルトリアの王子が放った炎は、大灯台のときに見たときのものと同様、いやそれ以上に大きく見えた。
杖から放たれていた炎を、剣から放たれた何倍もの炎が包み込む。
あっという間にケイラスの炎は消し飛んだ。
それだけではない。
吸収したケイラスのベギラマの炎などもはや誤差の範囲にすぎないのではないか――そう思われるほどの圧倒的な炎は、そのままケイラスへと向かい、その長身を焼きにかかった。
「……!」
ケイラスは声を出すことすら許され
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