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邪教、引き継ぎます
第四章
35.ラストチャンス
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ぬまま火だるまになり、火の圧で洞窟の床へと倒された。
 数回転がり、床に擦られてようやく鎮火した。

「お、おのれっ」

 彼は全身から煙を上げながら、立ち上がった。
 激しく焦がされ煙をあげている祈祷師のローブは、ダメージの大きさをよくあらわしていた。

 足に力は入っていない。
 彼はなおもベギラマを唱えようと、痙攣する手で杖を振りかざした。
 が、バランスを崩し、そのまま後ろに倒れた。

「修行? 復讐?」

 サマルトリアの王子が近づき、ケイラスの手から離れていた杖を、軽く蹴って転がした。

「さっき、“覚悟”がどうだとか言ってたけどさ」

 起き上がれない彼の仮面を、剣先で一度軽くコツンと突く。

「僕は、世界中の誰よりも近くで見続けてきたよ。本当に(・・・)覚悟が決まっている人間をね」

 あらためて剣がスッと引かれた。
 切っ先が赤黒く光る。

「じゃあ、さような――うわっ!?」

 鈍い音。
 緑の服の魔法戦士と白いローブの魔術師の二人が、合体したまま派手に洞窟の床を転がっていく。
 フォルがサマルトリアの王子に体当たりし、そのまま遠くまで押し出して倒れ込んだのである。

 巻き込みの可能性がある呪文や杖の力を使うより、確実にケイラスを救える――という、とっさのひらめきによる行動だった。意外性が過ぎてサマルトリアの王子も対応できなかったようだ。

「よし。フォルっ、離れろ!」

 この声は、若アークデーモン・ダスクである。
 フォルがそれを受けてまた転がるように離れる。

「イオナズン!」

 アークデーモンは種族ほぼ全員が習得済みという呪文・イオナズン。まばゆい爆発が、起き上がったばかりのサマルトリアの王子を頭上から襲う。

 広いとはいえども、洞内。盾をサッと掲げたサマルトリアの王子だけでなく、一瞬でこの場にある何もかもが光に飲まれた。

 その光がやむ。
 緑の魔法戦士は、片膝をつき、うっすらと煙をあげていた。
 それだけだった。

「あいつもそうだったけど、いったいどういう(からだ)してんだよ……」

 ダスクにとっては、以前ローレシア王・ロスと交戦したとき以来の理不尽な光景。思わずぼやきが出る。
 だが、時間は稼げた。
 バーサーカーの少女が黒焦げの祈祷師の腕を掴み、引き上げていた。

「お前全然ダメじゃないか……後ろで寝てろ」

 言葉と一緒に、ケイラスの体を後方のタクトへ向けて放り投げる。
 彼は慌ててキャッチしようとするも、受け止めきれず倒れた。

「いてて……。シェーラちゃん、もうちょっと優しく頼むよ」
「そんな余裕あるわけないだろっ」

 振り向かず怒鳴り声だけをタクトに返し、斧を構えるバーサー
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