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俺様勇者と武闘家日記
第3部
サマンオサ
真夜中の冒険
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 それは、一振の刃だった。そしてその刃を携えているのは、赤銅色の全身鎧を身にまとった一匹の魔物だった。
 私はそいつから素早く距離をとり、ルークに話しかけた。
「あれってさっき言ってた……」
「うん。確かに『キラーアーマー』だ。……ごめん、滅多に出ないなんて嘘ついて」
 本来なら冗談ですませられるが、状況が状況だけに笑えない。ただ、こういうことは経験上よくあることだ。
「『お約束』って奴だよね。それよりあいつの弱点ってなに?」
「弱点らしいものはないと思う。鎧を着てるだけあって、多少叩いただけじゃビクともしない。おまけに得意技は剣での攻撃だ」
 ルークの説明に、私は唇を噛んだ。弱点がないだけでなく、体術に対して剣術での攻撃は相性が悪い。よく船の上でユウリと手合わせするときも、彼にハンデをもらってやっと互角に戦えるくらい苦手なほどだ。しかもこの大陸に来てから初めて見る魔物であり、攻撃パターンもわからない。知っているとしたら、ルークの方だろうか。
「ルークはあの魔物と戦ったことがあるの!?」
「うん。二、三回だけだけど、割とてこずった相手だったよ」
 そう言いながら彼は、腰にくくりつけていた武器を取り外すと、すぐさまそれを右手に装着した。確かあれはルークの家の玄関先で見たものだ。
「今装備したのって?」
「『パワーナックル』だよ。素手での攻撃はほとんど効かないからね」
 ルークの言うパワーナックルとは、親指以外の四本の指にぴったり嵌まるように作られた、金属製の武器だった。拳を握るとちょうど拳面(攻撃を当てる面)に金属が当たるようになっているので、より高い殺傷能力が期待される。
 ルークは地を蹴ると、利き腕を大きく振りかぶり、キラーアーマーに向かって拳を叩き込んだ。ドガァン、と強烈な打撃音が深夜の森の中に響き渡る。
 体をくの字にして吹っ飛ぶ魔物を、ルークはさらに追いつめる。すぐに相手に詰め寄ると、続けざまに数発、同じ箇所に正拳突きを放った。
「すごい……」
 今のルークは、子供の頃とは比べようもないくらい強かった。もしかしたら今の私のレベルを越えているかもしれない。私は加勢するのも忘れ、しばらく幼馴染みの活躍に見惚れていた。
『ギィィィィィィッッッッ!!』
 最後の一発を放ち、金属をこすりあわせたような魔物の断末魔がこだまする。そしてそのまま魔物は事切れた。
 体術と相性の悪いキラーアーマーを拳のみで倒すと、ルークは手こずるどころかたいした疲労感も出さず、ふうと息を吐いた。
「ああいうやつは、相手の攻撃より早く動けないとやられちゃうからね。……ミオ、大丈夫?」
 私の目の前までやってきたルークの姿に、私は驚きと歓喜に打ち震えていた。
「ルークってば、いつの間に強くなったの!? すごいじゃない!!」
 興奮する私
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