第13話:遅参勇者と焦る魔女A
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「は?」
勇者マドノはとある貴族の言ってる事が理解出来なかった。
対する貴族もまた、話が噛み合わない理由が理解出来なかった。
「え?この領内で漁師を食い殺していたダークマーメイドとツノクジラを倒してくれたんですよね?」
「倒した?ダークマーメイドを全員?」
「何で実行した貴方様がそれを訊くのです?」
「んなわけねぇだろ!」
いっこうに噛み合わない勇者マドノとの会話に困惑する貴族。
そんな中、マシカルが貴族に質問する。
「で、漁師を襲っているダークマーメイドの残りは?」
「あー、それなら大丈夫です。ツノクジラが死んだ事で恐れ慄いたのか―――」
マドノは少しだけ焦った。
(まさか、ダークマーメイドが1匹も残っていないと言うのか?それでは駄目なのだ!まだ十分経験値を稼いでいない!)
「大丈夫な訳ねぇだろ!」
貴族は理解に苦しんだ。
漁師を散々苦しめたダークマーメイド達が1匹も居なくなったのだ。
しかも、ダークマーメイドがいなくなったのを契機に漁獲量が一気に回復したのだ。
大丈夫に決まっている筈だ。
(なのになぜ勇者マドノは『大丈夫じゃない』と言ったのか?まさか、こちらが気付いていない脅威がまだ存在しているのか?)
その後、マドノ一行は本当にダークマーメイドが1匹もいないのかを確認すべく、貴族から船を借りた。
マドノは血眼になってダークマーメイドを探すが、結局、誰にも襲われる事無くモンスターと一戦交える事無く港に帰り着いた。
「勇者様の危惧は杞憂に終わりましたな」
平和を確信した貴族は満面の笑みを浮かべていたが、一方のマドノ一行は完全に不機嫌だった。
「チッ!」
「え?舌打ち!?」
マドノ一行が何故不機嫌なのか解らず困惑する貴族。
「普通喜ぶ場面では?魔王軍の脅威が去ったのですから」
結局、マドノと貴族の会話は最後まで噛み合わぬまま終わった。
「誰だよ!?この俺が十分経験値を稼ぐ前にツノクジラを倒した馬鹿は!?」
そう!
ダークマーメイドに苦しめられる港町を救いにここまで来たのではなく、ただ単にダークマーメイドを山ほど倒してレベルアップしに来ただけだった。
しかし、グートミューティヒがその前にツノクジラを倒してダークマーメイドを一掃してしまっていたのだ。
「星空の勇者であるこの俺が魔王を倒すんだから、下手にボスモンスターを倒して俺が経験値を稼ぐのを邪魔してどうするんだよ!」
結局、経験値を稼げない事への不満を口にするマドノに対し、マシカルは自分達が到着する前にツノクジラを倒して恩を着せる前に名乗らずに去った何者かに対する不安でいっぱいだった。
(もし、そのツノクジラを倒したのが私達じゃない事がバレたら……)
が、その不安を白状しても、いつもの様に「功を焦ってんじゃねぇよ!」と言われるのがオチな
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