第三章
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そのソ連に捕らえられ行方を絶った。以後彼の生死は今も不明とあった。
彼はその本を最後まで、一気に読んだ。そのうえでだった。
深い悲しみを感じずにはいられなかった。善意、純粋な心から多くの人を救ってきた人が妨害を受け遂には捕らえられ行方を絶った、おそらくは殺されたことに対して。それでだった。
次の日の放課後だ。彼はその古本屋に行き店長に尋ねたのだった。思ったこと全てについてそうしたのだ。
するとだ。店長は遠いものを見る目になってこう彼に答えた。
「確かに悲しいよね」
「はい、本当に」
「善意で必死に人を救った人がね」
「暗殺されようとして。捕まって」
「多分だけれど」
こう前置きしてからだ。店長は彼に話した。
「ワレンバーグさんは殺されてるよ」
「ソ連にですか」
「うん、ソ連はそういう国家だったからね」
「満州やシベリアですか?」
「ああ、それだけじゃないからね」
店長は後ろも横も本に囲まれたカウンターの席に座ったまま彼に述べた。
「あの国はね」
「満州で酷かったらしいですね」
「ベルリンでもだよ」
戦場でのソ連軍の暴挙はあまりにも酷いものだった。j筆舌で語るにはあまりにも無残なまでのものがそこにはあった。
「そしてソ連の中でもね」
「弾圧ですか?」
「弾圧、そして粛清がね」
ソ連では普通に行われていたというのだ。
「あんまりだったからね」
「そうした国だったんですね」
「そう、そしてね」
それにだというのだ。
「そのソ連にワレンバーグさんは捕まったんだよ」
「捕まった理由も書いてましたけれど」
「色々書いてあったよね」
何故ソ連、スターリンがワレンバーグを捕まえたかは諸説ある。
「スターリンが気に入らなかったからとか」
「そんなことも書いてありましたね」
「善意だけで動く人間がいる筈がないと考えたんじゃないかとも書いてあったね」
「はい」
そのことも実際に書かれていた。その本では。
「捕まった時に書いてありましたね」
「そうだね。諸説あるけれど」
「捕まったことは事実ですね」
拘束であるが二人はこう話したのである。
「それは」
「うん、それでね」
それに加えてだった。店長は彼にこんなことも話した。
「ワレンバーグさんについてだけれど」
「素晴らしい人ですね」
彼はすぐにこう店長に答えた。
「何ていうか。その」
「こうした人もいたんだよ」
「善意だけで自分の命も顧みない人もですか」
「自分が汚いことをしてもね」
賄賂のことでもある。これがお世辞にも奇麗なことではないことは言うまでもない。
「そうしたんだよ」
「そうですよね」
「うん、じゃあわかったね」
「はい、悪人もしればですね」
「善人もいるんだよ」
店長は
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