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Fate/WizarDragonknight
写真立て
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書類をまとめていく。

「でも、こんなギャグみたいな量がまとまることってある?」
『ビッグ プリーズ』

 手を巨大化させ、より多くの書類をかき集めながら、ハルトはぼやいた。
 やがて、床に散らばったものを片付け終えた頃、ハルトは紙に押し倒されたそれを立たせた。

「……これは?」

 結梨以外無機質な質感が漂うこの研究室に、ハルトは初めて人の温もりを感じた。
 そこに置かれていたのは、写真立て。
 一瞬、そこに入れられていたのは白紙なのかと錯覚してしまうほどに埃を被っている。だがそれは、紛れもなく写真。
 好奇心には勝てない。
 ハルトは心の中で謝罪しながら、その埃を掃った。軽く咳き込み、埃の底に眠っていた写真が顔を見せる。

「これは……」

 分かる人物は、ただ一人。まだ今よりも幼い結梨が、男女の大人たちに囲まれて幸せそうな笑顔を浮かべている。
 家族写真だろう。すると、男性の方がおそらく、教授の素顔なのだろう。
 そしてもう一人。

「妻です」

 ハルトの背後から、教授が語りかける。

「ああ、ごめんなさい。勝手に見てしまって」
「構いませんよ。もう二年も前の事ですから」
「……二年?」

 教授は淡々と、まるで他人事のように語り出した。

「私の妻、結梨の母ですが……二年前に亡くなりました」
「……すみません。デリケートなことを聞いてしまって」
「気にしないでください。事故でしたから」
「……事故、ですか……」

 ハルトは再び、写真立てを見下ろす。
 もう二度と結梨を抱きかかえることのないその手。彼女に抱き着かれる結梨は、これから先、この写真以上の笑顔を見せるのは果たしていつのことになるのだろうか。そして結梨は、この研究室にいてそもそも笑顔になれているのだろうか。

「結梨ちゃんは……母親のことを、覚えているのですか?」
「いいえ。幼いのが幸いでしたね」

 教授はそう言って、ハルトへ背を向けた。また、研究を再開するのだろう。
 だが、ハルトはその間じっと彼の背中を見つめていた。
 ハルト(ファントム)には、薄っすらと違和感があったのだ。
 親近者の死。それを語る者からは、たとえ乗り越えたとしても、多かれ少なかれ絶望の気配を感じるのに。
 なぜか、教授からは。
 全く絶望の気配を感じなかったのだ。
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