第四章
34.また……
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が殺害されたことなど、知る由もなかった。あるとき突然スカルナイトの凶刃に襲われ、何がどうなっているのかわからないまま、洞窟内ゆえ逃げることもできず、奥に追い詰められ全員惨殺されたのだ。暴走したアンデッドたちは、真っ先に首を斬ってくれたり、とどめをしっかり刺してくれたりするような慈悲はなかっただろう。皆、苦しみ抜いて絶命したに違いない」
「今それ言う必要あるのかよ……神殿の生き残りであるこいつに」
「そうだよ、祈祷師くん。トラウマにさせるのはいただけないな。心の傷はベホマでも治らない」
シェーラとタクトの抗議も、ケイラスは一笑に付した。
「私はロンダルキアに来てからずっと、フォル君については違和感を拭えなかった。ロトの子孫を退けたという割には、あまりにも弱々しく見える。一度すべてを奪われた割には、その元凶であるロトの子孫やその国々への敵愾心も物足りない。そして見ていると、対外戦略においては常に、数ある選択肢の中から最も穏便かつ無難なものを選び続けようとしている。
君のここまでの道のりについては一通り聞いている。君が言う『あのとき』……どこまでを見ていた? 本当に生々しい現場は見ていなかったのではないか。親代わりだったというハゼリオ様の亡くなるところすら見ていないのではないか?」
「おっしゃるとおり、見ていない、です。その前に神殿の外に放り出されてしまいました。下の階で繰り広げられていた戦いも、直接は見ていません」
祈祷師ケイラスは、「やはりな」と言って続けた。
「私は君に本当の覚悟があるとは思っていない。子供が『大神官ごっこ』をしているにすぎぬと考えている。
この先、ロトの子孫三国は大規模な攻勢を仕掛けてくるだろう。暗殺や小競り合いなどではない、本格的な戦いになる。想像を絶するほどの凄惨な光景を見るかもしれない。そして決断の躊躇や采配の誤りひとつで、取り返しのつかないことになるかもしれない。お側に居たというだけでハーゴン様やハゼリオ様から戦いのことを学んでいないうえに、まともな戦闘経験も不足していそうな君に、この先も我々や魔物たちを率いていくことはできるのか? できないだろう。
だが私は違う。私には覚悟がある」
そのときだった。
「へえ。すごい自信だ」
洞窟の出口側から聞こえてきた、穏やかでマイペースな声。
既に激しく鼓動していたフォルの心臓が、一段と大きく跳ねた。
「あなたは……!」
今、世界で最も遭いたくない人間の一人かもしれない。
ヘッドギアからあふれる、茶色がかった金髪。垂れ気味の優しい目。大きなロトの紋章が入った服。赤黒い溶岩の光でもきれいに輝く隼の剣。
サマルトリアの王子・カインだった。
サッと、若アークデ
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