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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
激闘編
第九十一話 憂い
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がいい、既にハット達にはそう伝えてある」
「では…有難くお言葉に甘えさせていただきます」

 風呂を終えて用意された寝室に戻ると、キルヒアイスが神妙な顔をして窓の外を眺めていた。
「何か、あったのか?」
「いえ…伯は、ヒルデスハイム伯爵はどの様になさるおつもりなのかと思いまして」
「どの様に…それは皇帝が死んだら、という事か?」
「はい。伯は藩屏としての義務を果たす為貴族艦隊を訓練する、と仰って幕僚副総監の職に就かれました」
「そうだったな」
「幕僚副総監は言わば閑職ですからそれは可能ですが、伯はブラウンシュヴァイク一門、リッテンハイム一門両方の大貴族の艦隊の訓練を統括しておられます」
「派閥に関係なく訓練を行っているという事だな」
「はい、そして正規艦隊の一員としてノルトハイム兄弟を宇宙艦隊に送り込んでいます」
「送り込んでいる、というのは語弊があるのではないか?」
「いえ、途中から当時のヒルデスハイム艦隊に加わったラインハルト様や私と違って、ノルトハイム兄弟は伯の一門です。軍が要請したからといって簡単に伯が手放すとも思えません、自家の艦隊の指揮官なのですから」
「そうだな、ノルトハイム兄弟まで軍に取られては艦隊の指揮に支障をきたす事は間違いない」
「はい。そして伯のお考えではミュッケンベルガー元帥は万が一の為に帝都に残るという事ですが、その際ノルトハイム二個艦隊はどうなるのでしょう。普通に考えれば、ノルトハイム二個艦隊はブラウンシュヴァイク公につくでしょうが…」
「そう考えるのが普通だな」
「はい…あと伯爵は、一門としてはエリザベート様を推すが、藩屏としてはエルウィン・ヨーゼフ殿下を推すと仰られました。この意味は…」
「…藩屏としての義務を果たすおつもりかも知れんな」
「はい、ブラウンシュヴァイク一門としてではなく帝室の藩屏としての義務を果たす…その為にノルトハイム兄弟を軍に送り込んだ…」
キルヒアイスの想像通りだとすれば…もしそうなったらブラウンシュヴァイク公は激怒するのではないか。一門の重鎮たるヒルデスハイム伯爵がブラウンシュヴァイク公と決別する…。
「お前の想像通りだとすれば、俺はブラウンシュヴァイク陣営に取り込まれる可能性が高くなるな…」
これが権力中枢に立つという事か。巻き込まれた、では済まない、俺は自ら進んでその渦中に入る事を覚悟していたのではなかったか…。
「伯の言う通り、今後は相当な覚悟が必要だな」
「はい」


22:00
ハイデマリー・フォン・ヒルデスハイム

 お父様ったら、飲み過ぎよ!…ラインハルト様やキルヒアイス少将が来られて余程嬉しかったのかしら。でも、三人のお話は結構怖い内容だった…あら、お父様、今度は本を読み始めたわ…。
「お父様、何のご本を読んでいらっしゃるの
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