激闘編
第九十一話 憂い
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ヒW世は自分の娘をそれぞれブラウンシュヴァイク公、リッテンハイム侯に降嫁させている。そしてそれぞれの家に一人ずつ孫娘が生まれていた。エリザベートとザビーヌだ。
「まことに畏れ多い事ながら、陛下は何故お世継をお決めなさらぬのでしょう?閣下はどう思われますか」
伯爵のグラスにキルヒアイスが三杯目を注ぐ。意外なのはハイデマリー嬢も我々の話を聞いている事だ。伯爵なりの教育法なのかもしれない。態度から察するに口出しは禁じられている様だった。彼女はとんでもない量の生クリームの乗ったマキアートを飲んでいる…食べていると言った方がいいかもしれない。
「ふむ…ご自分が即位された折の事を、念頭に置いて居られるのかも知れぬな。元々陛下は後継者とは見なされておられなんだ…」
そう、若い頃の皇帝は放蕩者と見なされ、後継者としては見られていなかった。長兄リヒャルト、三男クレメンツが相次いで死に、奴に順番が回って来たに過ぎない。後継者など決めずとも、誰かがなるべくしてなる、そう考えているのかも知れない。
「決めたら決めたで宮中が緊張するのは間違いないがな、それに後継候補は両家の孫娘だけではない。もうお一人候補がいらっしゃるのだ」
「それはどなたですか?」
「亡くなられた皇太子ルードヴィヒ殿下のご子息だ。エルウィン・ヨーゼフと申されるお方で、今はまだ五歳ではなかったかな」
五歳…幼児がこの帝国を統べる事になるかも知れんとは…滑稽だな…だが血筋からすればその幼児が一番跡取りに近い筈だ。しかしそうは見なされていない、何故だ?
「ではそのお方がお血筋として後継者に一番相応しいのではないのですか」
「そうなのだがな。後ろ楯が居ない」
「なるほど、それで後継者と見なされて居らぬ、という事ですか」
滑稽どころか悲惨な話だ。自ら皇位を望まぬ限り、誰からも期待されていない人生を送る事になる。何の為に生まれ、何の為に生きるのか…。
「世知辛い話ではあるがな」
ハイデマリー嬢にきつく睨まれながら、伯は五杯目を注ぎ出した。伯はどう考えているのだろう…。
「…閣下はご世嗣ぎについてどのようなお考えですか?」
「…ブラウンシュヴァイク一門としてはエリザベート様を押すが…貴族の一人としてはエルウィン・ヨーゼフ殿下だな」
そう答えた伯爵の表情は苦しそうだった。訊いてはいけない質問だったのかも知れない。
「…話を戻そうか。おそらくミュッケンベルガー元帥は帝国の混乱、特に帝都の混乱を防ぐ為には自分がオーディンに残るしかない、と考えたのだろうな。陛下の健康状態が不安な今、おいそれと外征になど出られない…と」
ミュッケンベルガーが前線に出ないとなれば代わりに宇宙艦隊を指揮する者が必要になる。それで副司令長官、という訳か。
「卿の副司令長官職への就任は反対する者が多かった。普段
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