激闘編
第九十一話 憂い
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て勤務した事が大きかった。大貴族の役立たず艦隊を正規艦隊と遜色ないレベルまで引き上げ、前線を担う事の出来る艦隊を作り上げた有為の人材…そう評価されているからだった。貴族艦隊で功績を上げれば上の覚えがめでたい…今ではそう考えて配属先に貴族の艦隊を選ぶ中級指揮官が増えているという…。
「事実でなければ、俺を陥れたい連中には願ってもない内容だ」
「そうですね。注意が必要です」
…有為の人材、そうでなければヒルデスハイム伯が自分の艦隊を引き継がせはしない、軍上層部はそう判断したのだ。ウィンチェスターに喫した手痛い敗戦はあったものの、艦隊を引き継ぎ、先日のボーデンでの戦いでそれを覆した。噂が示している通り、ミュッケンベルガーの後釜に近い位置にあるのも確かだろう。だからこそ自重しなくてはならない。ミュッケンベルガーが副司令長官職を置く理由、またはそれに近い物が分からなければ安心する事は出来ない。
「…変わられましたね、ラインハルト様は」
そう言ってキルヒアイスは微笑した。
「そうか?」
「以前の様にあからさまに覇気を表に現す事がなくなりました」
「…ふん、そうかもしれないな。今思うと恐ろしい事だ。自分以外…お前を除いてだぞ、キルヒアイス…自分以外が馬鹿に見えていたのだからな…覇気などではない、稚気だな」
だが、そうではなかった。確かに幼年学校の貴族の姉弟どもは馬鹿ばかりだ。だがそれをとりまく者達…特に大貴族を支える人間達や軍上層部はそうではない。自分の居る世界が狭すぎて、それが見えていなかったのだ。反骨心がそれを更に助長した…そう思わねばやってはいられない、そういう気分もあったのだろう。
「そうではなかった、と?」
「ああ。考えても見ろ、十歳の子供がこの世の全てを理解出来ると思うか?」
「幼年学校に入る前の話ですね、それは」
「そうだ。あの頃は見える世界が単純だった。奪われた姉上を取り戻す為の力が欲しい、皇帝を凌ぐ力が欲しい…単純にそう考えて軍人になった。だがそれも皇帝に仕えざるを得なかった姉上のお陰だ」
「はい」
「姉上を取り戻し帝国の頂点に立つ、その思いは今も変わらない。だがそれは二人の力だけでは駄目だ、ただ単純に武勲をあげるだけでは駄目なのだ。俺はこの帝国を、自分の立つ世界をもっと知らなければならない」
「…それがヒルデスハイム伯に会う理由ですか」
「それだけではないがな。伯爵には世話になったし、お礼も言わねばならん」
「ご令嬢にも会えますしね」
「…ご令嬢?何の事だ」
「本当に興味のない事は何も知らないんですね、ラインハルト様は……」
16:30
オーディン、ヒルデスハイム伯爵邸、
エーバーハルト・フォン・ヒルデスハイム
「突然の訪問、まことに申し訳ございません。お邪魔ではなかったで
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