第七章
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「だから俺はな」
「無神論者だっていうのよね」
「共産主義者だぞ」
今はまだそのつもりだった。
「だからな」
「神社もよね」
「縁のない場所だ。全くな」
「そうね。けれどここはね」
「何か食うものがあるのか?」
「観るものはあるから」
妻が言うのはここからだった。
「だからね」
「それでか」
「そう。お花を観ましょう」
「花か。そういえばここは」
彼も伊達に大学の教授ではない。それならばだ。
平安神宮のことは知っていた。この社には多くの和歌が飾られ百花が咲き誇る庭があるのだ。その花達を観ようというのだ。妻の目的はここでわかった。
「そういうことか」
「食べてお花を観ればね」
「いい気分転換になるか」
「そう。いいでしょ」
「そうだな。それではな」
「お花観るわよね」
「そうさせてもらうか。これでもな」
ブルジョワも資本主義も宗教も嫌いでもだ。流石にあらゆるものが嫌いではない。
彼は花は人並に好きだ。だから言うのだった。
「入るか、社の中に」
「そうしましょう」
こうしてだった。彼は妻と共に今度は平安神宮の花達を観た。黄緑の草と青い小川で造られた庭には和歌の札が飾られ。
そして赤や白、青に黄色の花々が咲き誇っていた。和歌の世界そのままの見事な花達を妻と共に観たのだ。
それから今度はだった。
「銀閣寺か」
「行ったことあったかしら」
「いや、修学旅行は中学でも高校でも関西じゃなかったからな」
「何処だったの?」
「中学は日光、高校は北海道だった」
「それでなの」
「実は京都自体に殆ど来たことはなかった」
それこそ学会のシンポジウムや研究会以外で来たことはなかったのだ。
だからだ。この誰もが一度は訪れる銀閣寺もだというのだ。
「この寺もな」
「はじめてね」
「写真では観ていたがな」
だがそれでもだった。
「実際に観たのははじめてだ」
「そうなのね」
「後で金閣寺も行くな」
「勿論よ。京都だからな」
「それでその前にか」
「この銀閣寺もね」
「そうか。それにしてもな」
銀閣寺、名前とは全く違い輝きはなく静かな木造の、所謂侘び寂びを感じさせるそれを観ながらの言葉だった。
「思っていた以上に」
「その目で 観てみるとよね」
「違うな」
こう言うのだった。
「何かな」
「そうよね。静かよね」
「奇麗だな」
京都に来てはじめて出した。この言葉を今。
「この寺も」
「銀閣寺も?」
「平安神宮もよかった」
無神論者の言葉だ。その筈だった。
「それに南禅寺の山門もな」
「奇麗だった?」
「とてもな。それに銀閣寺もな」
「意外ね。あなたが奇麗って言うなんて」
「そうだな。それはな」
自分でもだ。宇山は自覚してい
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