第一章
[2]次話
ハピの気まぐれ
ハピは男でもあり女でもある、両方の性が身体にある神である。
顔立ちも中性的だ、頭には蓮とパピルスの花がそれぞれある。その彼はナイル川を司っていてその流れは彼によるものだ。
その彼にだ、冥界の神オシリスは言った、厳かな雰囲気である緑色の肌の髭のない顔の神である。
「人間達はそなたを敬っているが」
「それと共にですね」
「自分でもわかっているか」
「はい、私が気まぐれとですね」
「その様にな」
まさにというのだ。
「思っている」
「そうですね」
「全てはだ」
オシリスはさらに言った。
「そなたの働き故だ」
「ナイル川の流れですね」
「それは時として多くだ」
そうしてというのだ。
「少ない時もあるからな」
「承知しています」
「川の流れが多いとだ」
ナイル川のというのだ。
「それだけ多くのものがもたらされてだ」
「民の畑が栄えます」
「その分多くの実りが得られるな」
「はい」
ハピはその通りだと答えた。
「まさに」
「だが多過ぎるとな」
川の流れ、水の量がというのだ。
「そうであるとな」
「それはそれで、ですね」
「洪水になりな」
「人間達は困りますね」
「だから常にだ」
それこそというのだ。
「人間達は洪水を気にしている、それに逆にだ」
「川の流れが少ないですと」
「実りが少なくな」
そうであってというのだ。
「困る、また人間達はナイルの川の流れを使ってだ」
「船を行き来させています」
「川の流れがもたらす恵みを使ってるだけではない」
畑にというのだ。
「船の行き来にもだ」
「使いますね」
「だから川の流れはな」
「あの者達にとって命です」
「そのものだ、それが多かったり少なかったりするので」
ハピの働き次第によってというのだ。
「何かとだ」
「私に対してですね」
「感謝をしているが」
それと共にというのだ。
「困ったものもだ」
「感じていますね」
「そうだ」
まさにというのだ。
「これがな、だがそなたは」
「変えません」
「そなたの働きをだな」
「川の流れの量を常に変えるそれをだな」
「そうです」
こうオシリスに答えた。
「私は」
「そうだな、ではこれからもだな」
「その様にしていきます」
穏やかだが確かな声で答えた、そして実際にだった。
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