第二章
[8]前話
「護衛の兵士にです」
「なりたいか」
「宜しいでしょうか」
「そなたらしい」
オシリスはウプウアウトに笑顔で答えた。
「ではな」
「その姿になってもよいですね」
「認める、ではな」
「はい、兵の姿にもです」
「なるのだ」
「それでは」
こうしてだった。
ウプウアウトは兵の姿にもなる様になった、犬の頭に武装した兵士の身体を持つ様になった。だが。
その彼を見てだ、冥府の神々に仕える者達はいささか戸惑った。
「いや、間違えやすいな」
「全くだ」
「アヌビス様とな」
「アヌビス様はジャッカルでな」
「ウプウアウト様は犬だ」
「ジャッカルと犬は似ている」
「だから間違えやすいな」
こう言って戸惑うのだった、アヌビスはその話を聞いてウプウアウトに言った。
「我々は確かに似ているな」
「はい」
ウプウアウトもまさにと答えた。
「左様ですね」
「だからよく間違えられるな」
「そうですね」
「どうしたものか」
「ジャッカルと犬は確かに似ています」
ウプウアウト自身も言うことだった。
「実に」
「うむ、しかしそれで間違えられるとな」
「我等も困ります」
「実にな」
「色でも違わないと」
ここでだ、ウプウアウトは。
ふとこう言った、するとこの言葉が出た瞬間に二柱の神々ははっとなった、そのうえで言い合った。
「そうです、色です」
「そうだ、色だ」
お互いにまさにと言い合った。
「色が違うとわかる」
「間違えられなくなります」
「犬とジャッカルは似ているが」
「色が違えば間違えられません」
「実は私は茶色が好きなのだ」
こうだ、アヌビスは話した。
「だから私が色を変えよう」
「そうされますか」
「茶色になる」
こう言うのだった。
「毛の色をそうする」
「そうされますか」
「うむ、ただジャッカル達の中には黒が好きな者もいるだろう」
彼等のことも考えて言うのだった。
「だから身体は茶色でもな」
「黒い部分は残しますか」
「そうしよう」
ウプウアウトに聡明さが見える顔で述べてだった。
アヌビスは早速自分の顔の毛の色を茶色にした、ジャッカル達もそうさせたが黒が好きな者達のことを考え背中は黒いままにした。
こうしてウプウアウトとアヌビスは間違えられることはなくなった、そしてジャッカルの色も変わった。今ジャッカルが茶色で背中が黒いのはこれが元である。エジプトに伝わる非常に古い話である。
オシリスの犬とジャッカルの色 完
2024・3・12
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