第五章
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「そういえばナチスも革命とか言っていたな」
「いや、ナチスは確か」
そのナチスについても気付かれることはあった。それはというと。
「国家社会主義労働者党だな」
「社会主義!?」
「そういえばそうか」
誰もが気付いてきた。
「あれも社会主義か」
「そういえば経済のやり方もな」
企業があってもそれを国家の完全なコントロール下に置き自由な経済活動をさせない。それは即ちだった。
「あれは社会主義だったのか」
「ヒトラーは社会主義者だったのか」
「極端な右翼じゃなかったのか」
むしろ逆だったことに気付いたのだ。ナチスの正体は。
「極端な左翼か」
「民族主義を唱えていてもな」
「いや、ソ連も民族主義を唱えていたぞ」
ロシア人第一主義だ。それに基く政策を敷いていた。
「じゃあナチスもソ連も極左か」
「左から極限までいった例か」
「じゃあ連中は同じか」
「ナチスとソ連は同じか」
そしてだった。
「ヒトラーとスターリンは同じ独裁者か」
「何処までも一緒だったんだな、ナチスとソ連は」
「戦争をしていても」
「スターリンの一国社会主義は国家社会主義だな」
人々はこのことにも気付いた。
「そのままだったのか」
「ナチスは全体主義、そしてソ連も全体主義」
「名前が違うだけで全部同じか」
「そうだったのか」
皆気付いたのだった。このことに。
そしてだった。遂にこの評価が定着した。
「コミュニズムはファシズムだ」
「連中が戦争をしたのは同じだからか」
「過激派が内ゲバを起こすのと同じか」
「全く同じだったのか」
東欧の民主化からソ連の混乱、そして崩壊していく中で気付いていったことだった。そしてその共産主義の崩壊は。
当然宇山も見ていた。彼はソ連が崩壊しヴォストークが引き下ろされレーニン像が倒されていくのを見た。彼は茫然自失となった。
それでだ。講義の時も家にいる時も目は虚ろで何者かわからない対象に対してこう言っていくのだった。
「共産主義は何だったんだ」
「ソ連はナチスだったのか」
「スターリンとヒトラーは同じだったのか」
「誰も幸せにしない国だったのか」
「経済は破綻しものは何もない国」
「戦争と弾圧を繰り返す国」
ただ虚ろな言葉を出していく。
「それが共産主義国家」
「理想国家だったのか」
「俺が考えていた国は何だったんだ」
「共産主義とは一体」
最早抜け殻の様になっていた。その彼を見てだ。
学生達も家族もだ。こう彼に言った。
「ちょっと休んでみたらどうですか?」
「旅行にでも行ったら」
「気分転換にいいよ」
「何処かに」
「旅行」
そう聞いてもだ。彼はというと。
やはり虚ろな声を出すばかりだった。最早生ける屍になっていた。
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