暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
XV編
第208話:打たれる先手
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にまで至っているのだが、問題なのは新たに追加した能力が人間と言う生物の器を大きく超えてしまっている事にあった。

「あの子達は、嫌な言い方になりますが端的に言って人と人以外の部分を継ぎ接ぎした体の持ち主です。本来であれば拒絶反応が出て然るべきなのですが、彼女達はパナケイア流体を用いてそれを克服しているのです」
「ぱな、けいあ……?」
「何だか、またまた難しい単語が出てきて頭が沸騰しそうなのデス……」

 専門知識を出されても、そちらに関する知識は人並み程度かそれ以下しか持ち合わせていない戦闘メンバーである。アリスの説明にチンプンカンプンと言った様子で隣の者と顔を見合わせたりしている。それを見兼ねて了子が噛み砕いた説明をしてくれた。

「ま、端的に言えば人とそれ以外とを繋ぎ合わせる潤滑剤みたいなものと思ってくれればいいわ。それを力の源にしてるのが、あの錬金術師の女の子達って事よ」
「な、なるほど……」

 一応の納得を見せる響に対し、クリスは隣に立つ透を見てある疑問を抱いた。

「人と人以外……って事は、透の場合とは違うのか?」
「そうですね。透君の場合は元々あったものが損なわれた状態。パズルのピースが欠けた状態です。それを元に戻すだけなら、パナケイア流体も必要無いので人工透析も必要ありません」
「ほっ……」

 アリスが生み出したのと同じ技術を使われているのであれば、もしや透にも何か問題が起きるのではと一瞬危惧したクリスではあったが、幸いな事に彼の場合はそう大事になるような事もなく済んだ事に安堵の息を吐く。透はそんな彼女の背中を優しく撫でつつ、では肝心のエルザ達はどうなのかと言う事を訊ねた。

「それじゃあ、あの子達の場合は……」
「彼女達の場合は、パナケイア流体が時間経過で淀み、体を蝕んでしまいます。恐らく力を強く使えば使う程、その消耗は激しくなるでしょう」
「勿論力を使わなくても、その肉体を維持する為だけでもパナケイア流体は淀んでいく筈です。つまりあの人達は、生きる為に定期的な人工透析を必要としていると言えます」
「全血製剤を欲しがったのもそれが理由、か」

 エルフナインとガルドの言葉に、透は先程の自分の行いを後悔していた。彼女達が運んでいる物が何なのかを知らなかった……と言うより、何かを運んでいたと言う事すら知らなかったとは言え、自分は彼女達が生きる為に必要なものを取り上げる形となってしまった。彼女達が生きる事に何の罪もないと言うのに、それを阻害するような事をしてしまったのだ。
 あの時、エルザがテレポートジェムを取り出した時、それを妨害しなければ少なくとも彼女達が生存を脅かされる様な事は無かったのにと後悔せずにはいられない。

 そんな彼の気持ちを察したのか、クリスが優しくその手を取った。


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