第三章
[8]前話
「私は出来ました」
「これは人間業ではないが」
アクハトはこう言うとだった、その瞬間にはっとなって言った。
「まさか」
「気付いたかしら」
アナトはアクハトに思わせぶりな笑顔を向けて言った。
「どうやら」
「そ、そうですか」
「ではね」
「弓をお渡しします」
「それは何よりよ」
アナトは今度は純粋な笑顔で応えた、そうしてだった。
彼女は本来は自分のものとなる筈だったアクハトが持っていた弓を自分のものとした、そのうえでコシャルのところに行って弓を見せて言った。
「この通りよ」
「話は聞いたが」
「穏健だったわね」
「貴殿にしてはな」
コシャルはこう答えた。
「そうだな7」
「これでも考えてよ」
そうしてというのだ。
「私もやっているのよ」
「そうなのだな」
「ああした時はね」
「まずは神性を隠してだな」
「その場に行ってね」
そうしてというのだ。
「その力を見せるのよ」
「そうすることだな」
「そしてね」
「この度はだな」
「この通りによ」
「目的を果たしたか」
「そうよ」
まさにというのだ。
「よくやったわ」
「自分でもそう思うか」
「ええ」
「そうだな、別に誰も傷付けていないしな」
アナトが血を好む女神であることからだ、コシャルは考えて頷いた。
「貴殿としては穏健だ」
「そうしたやり方だったわね」
「うむ、それではだな」
「弓は本来の持ち主の手に渡ったし」
即ち自分のというのだ。
「本当にね」
「これでよしだな」
「そうよ、平和にことが進んで何よりね」
「平和とは思わないがな」
コシャルはそのことには疑問を呈した、だが何はともあれだった。
弓はアナトの手に渡った、女神は自分が手にすべき弓を手にしたがそれまでにはこうした話があった。メソポタミアに伝わる古い神話である。
アクハトの弓 完
2024・3・13
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