第三章
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「それが何故資本主義の巨魁であるアメリカと手を結ぶんだ」
「だって。中国ってソ連と仲が悪いじゃない」
幸恵は普通の主婦だ。元々工場の娘で夫とは見合いで結婚した。夫の思想には染まっていない。それで淡々として言ったのである。
「だからでしょ。アメリカとソ連は有名だしね」
「しかし何故共産主義で」
宇山は驚きを消せないまま言う。
「米帝と」
「ソ連とやり合う為でしょ」
「やり合う!?共産主義国家は平和勢力だ」
戦後長い間言われていたこともだ。彼は盲信していた。
それで言うのだった。ムキになって。
「確かに対立していても戦争までは」
「どうでしょうね」
「おい、違うっていうのか」
「平和勢力っていうけrど」
幸恵はここから夫の言葉を否定した。
「それ自体がね」
「違うっていうのか」
「そうよ。あなたの好きなソ連にしても」
言うのはこの国だった。
「バルト三国併合したじゃない。脅して」
「あそこは元々ロシアの領土だっただろ」
宇山はすぐに反論した。ソ連は帝政ロシアの後継国家にあたるからだ。彼なりにこう反論できる根拠はあるのだ。
「だから併合は当然のことだ」
「それ言ったらどんな理屈でも通用するわよ」
「何っ!?」
「だから。独立してる国もそう言ってしまうとね」
侵略でも何でもできるというのだ。
「それって無茶苦茶じゃない」
「元々の領地を併合しただけじゃないか」
「併合された国の人達はそう思わないから。それにね」
幸恵は宇山に対してさらに言う。
「ハンガリーでもチェコでもじゃない」
「武力蜂起を弾圧しただけだ」
「それも内政介入でしょ。これもおかしいじゃない」
「共産主義を否定して自由主義に入ろうとさえしかねない動きだったんだぞ」
「そう。共産主義に反対するなら弾圧してもいいの」
「それは」
「おかしいでしょ、絶対に」
幸恵は夫にさらに言う。
「そういうのって」
「しかし。共産主義は」
「同じよ。あなたの嫌いな資本主義と一緒でね」
「だから中国がアメリカと手を結んでもか」
「普通にあることじゃない」
「そう言うんだな。あくまでな」
「事実を言ってるだけだから」
普段は優しい妻も今は冷淡だった。そうしてだ。
中国はアメリカと国交を結ぶだけでなく日本とも手を結んだ。そして同じ共産主義である筈のベトナム、アメリカと戦っていたその国に攻め込んだ。
宇山はこのことに呆然となった。そしてだ。
大学の講義で何とかこのことを言おうとする。だが。
教室の生徒の一人がこう彼に言ってきた。彼が言うより先に。
「先生、中国とベトナムが戦争をはじめましたね」
「あ、ああ」
先に言われたことに怯みながらもだ。彼は教壇のところから応えた。
「そうだね」
「
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