第一章
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入道の返答
平治の乱に勝ち隆盛を極める平清盛のところにこんな話が来た。
「ふむ。羅生門の南か」
「門から暫く行ったところにです」
やや背が低く色が黒いが至って穏やかで鷹揚な様子の清盛にしっかりとした身体つきで生真面目そうな雰囲気の長子である平重盛が話す。
「夜の子の刻にです」
「あやかしが出るか」
「それがどういった姿かわかりませぬが」
姿まではわからないがというのだ。
「それでも出て来てです」
「人を襲って食うか」
「いえ、それはない様です」
あやかしの類によくあるそうした話はないというのだ。
「ですが一人でその子の刻にそこにいると」
「出て来るか」
「そしてあれこれと問うてくるとのことです」
「ふむ。面白いな」
清盛は嫡子の話を聞いてすぐに述べた。
「では今宵にでもじゃ」
「まさかと思いますが」
「わしが行こう」
その羅生門の南、都の外に出てというのだ。
「そしてどういったあやかしが出るか確かめて来る」
「父上、それは」
重森は清盛が楽しげに笑って言うのを聞き顔を曇らせて謹言に入った。
「あまりにも危険です」
「命を狙われるというのじゃな」
「はい、確かに乱には勝ちましたが」
その平治の乱とその前の保元の乱だ。平家はこの二つの乱で台頭し今の繁栄に至っている。
しかしそれでもと重盛は言うのだ。
「それでもです」
「わしの命を狙っておる者は多いか」
「源氏の者がまだ残っているかも知れません」
まずは彼等のことを挙げる。
「それに摂関家や公家の方々も」
「妬まれておるか」
「はい、あの方々は口では父上をいつも褒めておられますが」
「腹の中はのう」
「何を考えておられるかわかりませぬ」
妬み、蔑み、そうした感情があるというのだ。
「それに父上がいなくなれば」
「位や役職は公家の方々のものに戻るな」
「平家が栄えているということはそれだけ他の家が圧されているということです」
世の広さは変わらない、それならばそうなるのは必然だった。
一つの家が大きくなればもう一つの家が押される、決まった広さならそうなるのは道理という他ないことだ。
これも平家が妬まれる要因である、重盛はこう父に言うのだ。
「ですから」
「そうじゃな。わしがいなくなればな」
「平家は父上あっての平家でもあります」
棟梁の彼の力量が平家を支えているというのだ。
「若し父上がいなくなれば平家もまた」
「落ちぶれるか」
「ですから軽挙なことは」
「厳しいのう。しかしじゃ」
「赴かれたいですか」
「興味がある。一人でなければ駄目じゃな」
「そうでなければ出ないとか」
重盛は父にこのことも話す。
「そうらしいです」
「そう
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