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SAO─戦士達の物語
MR編
百六十三話 姉、襲来(後)
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外国に暮らすようになればわかるわよ」
「えー、 私は日本でいいかなぁ、英語できないし」
「教えようか?」 という呼びかけに 「学校のだけでいいよぉ」と弱弱しい声で返しながら、直葉は自分の着替えを持って風呂場へと去っていく。怜奈がリビングを見回すと、床に座り込んだ涼人だけが残っていた。

「あれ、叔母さんは?」
「明日の準備するって部屋、カズは大学の調べものだとよ」
「お、良いわねちゃんと考えてんだ、で、アンタは何してんの?」
「爪切り」
言った言葉に合わせて、 パチン、 パチンと景気のいい音が響く。 少し見下ろす形で後ろから覗き込んだ怜奈はふと思いついたように、静かに弟の背中から前へと腕を回した。

「……爪切ってるんだっつの、刃物」
「今ので終わったでしょ?ちゃんと勢いつかないように気を付けたってば」
「ったく……治んねぇなその“癖”」
「癖じゃないです愛情表現です〜」
しがみついた弟の背にこすりつける様に首をぐりぐりと回しながら、どこか楽しそうにそういった彼女はけれど、不意に動きを止めてそれまでより少し強く涼人を抱きしめる。

「なんぞ」
「別に、ちゃんと生きてるかなって思っただけよ...」
「死んでるように見えんのか俺?」
「そうじゃなくって……」
しがみついた姉の顔が、自分の背中に押し当てられているのを感触で感じ取る。 彼女が何を求めてそうしているのか、一応は分かっているつもりだ。

「んな心配しなくてもちゃんと動いてるっつーの」
「そうね、そう思う……でもゴメン、こうさせて」
「……」
泣きそうにすら聞こえるその声で自分の鼓動に耳を澄ませる彼女にそういわれてしまうと、 涼人としては何も言えなくなる。 SAO をクリアした翌日の夜、 ほとんど大学に居たその格好のままで病室に飛び込んできたときの姉の顔は、今でも覚えている。 母が死んだときにはじめて見せた顔をもう一度見せて、何も言えずに泣きじゃくりながら自分に縋り付いて泣いた彼女の姿は、二年ぶりの再会であったことを抜きにしても、いくらかの罪悪感を涼人に覚えさせる程度には弱弱しい物だった。今の彼女は……涼人と二人きりの時にしか見せる事のない姉のこういう表情は、どうしても涼人を弱らせる。

「……最近どう?調子いいの?」
「まぁ、ぼちぼちってとこだな、何事も問題なく普通に生活してるぞ」
「そう……ゲームばっかりしてないでね」
「……そいつは何とも言えないとこだなぁ」
「ねぇ、リョウ……」
「わあってるって、 姉貴が言いたいことは分かるけどな……」
「……ほんと、そういう所はアイツに似てるんだから」
呆れたような、諦めたような声でそういった怜奈はふぅ、と一つ息を吐いて、背中から離れるそうして振り返れと促す様に肩を叩くと、首を回した涼人の頬を指
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