第一章
[2]次話
オーケストラに来た猫
イスタンブールでのオーケストラの音楽祭にだ、ツアーガイドをしているペギ=イシル黒い波がかった長い髪の毛と黒い目が印象的な彫のある細面に長身の若い女性である彼女は友人達と共に会場の観客席にいたが。
友人の一人がだ、音楽祭がはじまる前に言った。
「このホールの周りも猫多かったわね」
「そうね」
「確かにね」
「そうだったわね」
イシル達もまさにと答えた。
「この街は何処でもそうだけれど」
「このホールの周りもだったわね」
「何匹か猫がいたわね」
「皆地域猫ね」
「猫がいなかったら」
イシルは笑って話した。
「イスタンブール、トルコって感じがしないわね」
「そうよね」
「元々イスラムの国で猫を大事にしているけれど」
「コーランに書かれている通りに」
「それでもね」
「若しトルコに猫がいなかったら」
友人達もそれならと応えた。
「トルコって感じがしないわね」
「そうよね」
「それは言えるわ」
こうした話をしたのだった、そしてだった。
コンクールの音楽がはじまると音楽に専念した、オーケストラが演奏しその中でベートーベンの田園が演奏された。
その曲が演奏されるとだ、不意に。
「あら」
「猫?」
「猫が来たわ」
「ニャア」
観ればステージの観客達から見て右手からだった。
焦げ茶と黒の縞模様で腹や足、顔の下が白い雄猫が来てだった。
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