第二章
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「俺はいいです、しかも馴染みの場所なら」
「尚更だな」
「はい」
「じゃあ決まりだ、お坊さんの資格はこれから取ってもらう」
「大学に通います?」
「通信教育があるからな」
甥に何でもないといった調子で述べた。
「勉強してくれ、資格はそれで貰えてな」
「修行ですね」
「頼むぞ、だがそんなに身構えるな」
「修行といっても」
「掃除をして学んで座禅を組んでな」
「ボランティア活動ですね」
「そういうことだ、死ぬ様はことは一切ない」
叔父は甥に笑って話した。
「わかってるな」
「子供の頃毎年みたいにここでお泊りさせてもらいましたし」
「身構えるな、大事なのは信仰だ」
「それを持つことですね」
「頼むぞ」
「わかりました」
土方は大野の言葉に確かな顔と声で頷いた、こうして彼の就職は決まり大学卒業前からこちらに移り住んで修行に入った。
その中で仏門を学ぶ僧侶の資格も取る様にしていってだった。
資格を取り正式に寺の跡継ぎになった、日々掃除にボランティアに励み座禅を組みお経も覚え唱えた。そうしているうちに。
信仰心も備えた、そして結婚して子供をもうけ寺も継いだが。
師匠であり先代である叔父にだ、ある日彼は苦笑いを浮かべて話した。
「確かに命に関わる苦行はなくて」
「それは漫画の話だからな」
「そうですね」
「学んでいて楽しいな」
「仏門は、ただ」
その苦笑いで言うのだった。
「何でも出されたものは食べる」
「残さずな」
「それが辛いですね」
「まあそれはな」
「食べられることは有り難い」
「そう思うことだ、どんな仕事も楽しいことがあれば」
それと共にというのだ。
「辛いこともある」
「それを受け入れてですね」
「やっていくことだ」
「住職の仕事も」
「だからどんなものもな」
食べるものはというのだ。
「出されたら残さず食べるぞ」
「味や好みは我慢して」
「そして残さずだ」
「それは絶対ですね」
「ああ、それで今度イギリスから来た人達の家に行くが」
「スコットランドの」
「何でもハギスを振る舞ってくれるらしい」
この料理をというのだ。
「何でもハギスの味はな」
「覚悟していきます」
こう言ってだった。
共にその人の家に行ってハギスをご馳走になった、その味は恐ろしいものだったが二人共残さなかった。土方もそうしたがこれも仕事そして何よりも信仰だと受け入れたのだった。そのうえで寺に帰ると念仏を唱えた。
親戚のお寺に入って 完
2024・6・23
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