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邪教、引き継ぎます
第四章
32.海底の洞窟
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ん。言い訳にはなりませんが、お茶くみや掃除、裁縫などを仕事にしておりましたので」
「……。君がロトの子孫の襲撃で生き残ったのは、ハゼリオ様が君を神殿から脱出させたゆえと聞いた。それは本当なのだろう?」
「はい。本当です」
「不思議だ。なぜ君だったのか」
「最後にハゼリオ様のもとにいたのが私だったからだと思いますが……」

 顎に片手をやるケイラス。

「おい、失礼だろ」

 我慢できないという感じで若アークデーモン・ダスクが声をあげた。わかりやすく憤怒の感情がこもっていた。

「黙って聞いてれば。好き放題言いやがって」

 フォルは慌ててダスクの胸を押さえた。

「あっ、私は全然問題ありませんので! お気持ちありがとうございます」
「ん、ああ、まあ、お前がいいならいいけどよ……。あんま我慢すんなよ?」
「はい、大丈夫です! あ、そういえば、ケイラスさん」  
「何かな」
「ベギラマを使えたんですか? すごいです。実は祈祷師ではなく妖術師だったりされるのでしょうか?」

 一般的には祈祷師が使える攻撃呪文はギラであり、ベギラマは妖術師以上が使用する。
 フォルの質問は空気を変えるためにしたものであり、そこまで深い意味を持つものではなかった。
 しかし、ここで不思議な()が空く。

「……支部崩壊後に覚えた」

 そしてこの返答。

「そんなことより、だ」
「はい」
「私はロンダルキアに来るまで、教団を立て直しロトの子孫を退けたという君のことを、さぞ心身ともに屈強な人間だろうと想像していた。だが、だいぶその想像とは違ったようだ」
「……」
「だから先に言っておきたい。私の予測が正しければ、このさらに先には地獄のような光景が待ち構えているだろう。見るのは君にとってつらいはずだ」

 仮面を着けているため、ケイラスの表情はうかがい知れない。洞内特有の反響と重さが乗せられた声だけが、フォルへと向けられる。
 ケイラスは続けた。

「もし降りたくなったら無理せず降りるといい。私はいつでも君と代わる用意がある」

 降りる。代わる。
 何を?
 この洞窟におけるパーティのリーダーという狭義にとどまらない意味にも取れるような、そんな言い方だった。
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