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金木犀の許嫁
第二十三話 里帰りその四

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「あの街は食べ尽くせないですね」
「凄いですね、そういえば」
 白華はここでこう言った。
「蓬莱のすぐ傍に金龍ラーメンがあって」
「そちらも有名ですね」
「本来h本館さんがありますね」
「あちらも有名ですね」
「そうですよね、カレーの自由軒もありますし」
「そうです、あのお店は」
 幸雄は白華の今の言葉を聞いて夜空と佐京に顔を向けて言った。
「是非お二人にはです」
「行くべきですか」
「自由軒には」
「そうです、織田作之助の夫婦善哉に出て来るお店で」
「ああ、あの作品で」
「主人公の二人があのお店でカレーを食べてますね」
「あのお店の名物カレーを」 
 このカレーをというのだ。
「食べています」
「そうでしたね」
「あのカレーを食べていましたね」
「ですから」
 それ故にというのだ。
「是非です、あのお店と題名にもなっているお店に」
「夫婦善哉ですね」
「法善寺横丁の」
「あちらにも行かれて」
 そうしてというのだ。
「楽しまれて下さい」
「わかりました」
「一度二人で行きます」
「お二人は結婚されますので」
 許嫁の間柄だからだというのだ。
「是非です」
「自由軒と夫婦善哉に行って」
「一緒に食べるべきですね」
「他にも行って欲しい場所やお店はありますが」
「まずはですね」
「その二つですね」
「私達にとって大阪は特別な場所ですね」 
 幸雄はこうも言った。
「長野それに和歌山と並んで」
「大阪、そうですね」
 佐京はこの街と聞いて言った。
「俺達のご先祖様はあの街に長くいて」
「そうしてでしたね」
「はい、必死に戦いました」
「そして鹿児島に逃れました」
「秀頼公をお護りして」
「そうしました、ですから」 
 それでというのだ。
「あの街は特別です」
「だから尚更ですね」
「行かれて下さい、私は幸村公はご先祖様としてだけでなく」
 幸雄は微笑んで話した。
「人としても尊敬しています」
「立派な方でしたね」
「義に生きて」
 そうしてというのだ。
「主君、家臣、友人、兄弟をです」
「十勇士のご先祖様達をですね」
「心から大事にした方で知勇もです」
「兼ね備えて戦って」
「そしてです」
 そのうえでというのだ。
「戦国の幕を下ろした」
「そうした人でしたね」
「ですから」
「幸村公を人としても尊敬されていますか」
「はい」 
 そうだというのだ。
「あの方の様になりたいです」
「そうですか」
「そして」
 そのうえでとだ、幸雄は話を続けた。
「私もあの方の様になりたくて」
「努力されていますか」
「文武そしてお仕事も」
 こちらもというのだ。
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