第五章
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「ええんじゃ。その気遣い凄い好きじゃ」
「私のそれが」
「そうじゃ。わしじゃから告白したけどな」
彼の方から言ったのだ。明子もそれを受けて交際がはじまったのだ。
「その気遣いと。それに」
「それに?」
「胸も。まああったわ」
このことは照れ臭そうに言っての言葉だった。
「実際にな」
「胸って」
「まあそれもあったわ」
照れ臭そうに言っていく。さらに。
「それでもじゃ」
「私の気遣いが」
「胸は二番じゃ。一番は」
「気遣いなのね」
「そうじゃ。わし明子ちゃんの気遣いが好きじゃ」
また言うのだった。
「ほんまにな。これからも頼むで」
「うん」
明子は胸もあるがそれ以上に心だと言われてだった。
自然と笑みになりこう答えた。
「これからもね」
「よろしゅうな」
「うん。何か」
明子は浩二に応えてから自然に温かい笑みになった。そのうえでこう自分の隣に今もいる浩二にこう言った。
「この雨にね」
「雨に?」
「感謝しないとね」
浩二がどうして自分を好きなのか聞けてそれでだった。
「本当にね」
「ああ、雨が降るとな」
しかし浩二は明子のそうした心には気付かないまま言う。
「お百姓さんが助かるわ」
「えっ?」
「だから。農業にはお水が必要じゃろが」
浩二が言うのはこのことだった。
「そうじゃろ。お水がないとな」
「お米もだけれど」
お握りをこよなく愛する明子もこのことは言える。
「雨がないと」
「そうじゃろ。だから雨が降らんとな」
「そうね。そうよね」
明子は今度は思わずという感じで笑った。浩二のそうした何処かピントがずれているがそれでも広い範囲を気遣うものを見てだ。
それでそうした微笑みになりこう言ったのである。
「雨が降らないと。よくないわね」
「そうじゃ。恵みの雨じゃ」
「そうね」
二人で話す。そしてだった。
明子は浩二の隣で微笑む。そうして二人で歩いていく。浩二の気持ちだけでなく心まで見せてくれた雨に心から感謝しながら。
大きいだけじゃない 完
2012・8・30
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