第二章
[8]前話
「私だったら無理よ、目が見えなくてね」
「作曲するとか」
「生きるだけでね」
ただそれだけでというのだ。
「物凄くね」
「大変よね」
「だからね」
「作曲まで出来るなんて」
「本当にね」
それこそというのだ。
「どれだけ凄いか」
「というか目が見えなくなったら」
「それで絶望するわよね」
「ベートーベンだってね」
この作曲家の話もした。
「耳が聞こえなくて」
「それでも作曲したから」
「この人も凄いわね」
「耳が聞こえない方が辛い?作曲には」
「音楽は耳だしね」
「やっぱりそうなるかしら」
「目より辛いかしら」
作曲家、音楽家にとって耳が聞こえなくなることはというのだ。
「やっぱり」
「けれどベートーベンは作曲したし」
「耳のハンデに打ち勝って」
「そして宮城道雄もね」
「目のハンデに打ち勝って」
「それであれだけの曲を残したから」
「私だったらもうね」
唸る様にして言った。
「それだけでね」
「絶望するわよね」
「自殺するかも」
「私もよ、けれど自殺しないでね」
「あれだけの曲を残すなんて」
「凄い話」
「本当にね」
二人で話した、そしてだった。
それからも宮城道雄の曲を演奏していった、そうしてその度に思ったのだった。目が見えずともこれだけの曲を残したことは偉大と言うしかないと。
盲目の音楽家 完
2024・6・22
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