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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
激闘編
第八十九話 ヴィーレンシュタイン追撃戦
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ュッケンベルガー元帥は撤退を決めた…。
「それにだ、第九艦隊はまだ戦ってるんだぞ!単独でだ!」
「分かった。私も悪かった、だから落ち着いてくれ、ラップ…参謀長」
私が敢えて参謀長の部分に力を込めて呼び掛けた事に気づいたのだろう、彼は深呼吸すると背筋を伸ばし直立不動の姿勢をとって、私に敬礼した。
「…失礼しました司令官、少々頭に血がのぼってしまった様です。熱を覚まして来ます」


02:20
ジャン・ロベール・ラップ

 分かっちゃいるんだよ俺だって…でもな、目の前のニンジン欲しさにヒョイヒョイ着いて行くんじゃ、命令系統も任務もあったもんじゃないだろ…。
「参謀長」
「…グリーンヒル中尉か、どうしたんだ?」
「閣下がこれを参謀長に持って行ってくれと…自室にいらっしゃらなかったので、多分ここ(食堂)だと思いました」
コニャックか…ヤンの奴、いいもの持ってるな…。中尉は氷とグラスを貰って来ます、と言って、厨房の奥に駆けて行く…ヤンには勿体ないくらいのお嬢さんだな、中尉の気持ちに奴が全く気付いていないのがまたもどかしいというか、腹立たしいというか……。
「おや、付き合ってくれるのかい?」
「少しだけですが」
中尉はグラスを二つ用意していた…トング、マドラー、アイスペールがあるのは分かるが、なんでアイスボールの用意まであるんだ?どうなってるんだ、この艦は…。乾杯して一口飲むと中尉が頭を下げた。
「すみません参謀長、父のせいで」
「…お父上が悪いんじゃないさ、武勲に目の眩んだ艦隊司令官達が悪いのさ。それに、中尉が謝る事でもない。ヤンだって分かっているよ」
「はい…」
自分の父親が、自分の好きな男を否定する…いや、否定した訳じゃないが、好きな男からの進言を拒否した現場を見ていたんだ、そりゃ切ないだろう…いや、待てよ、グリーンヒル大将は、中尉のヤンに対する気持ちを知っているんだろうか?通信中、大将からも中尉の事は見えていた筈だ、気持ちを知っててあの内容だと、父娘同士気まずかっただろうなあ…。
「中尉、ちょっとデリカシーに欠けるかも知れないんだが」
「はい?」
「中尉はヤンのどこがいいんだ?」
…酒を吹き出してむせるなんて、まるで漫画だな、分かりやす過ぎる…。
「閣下はその、エル・ファシルで助けて下さった命の恩人ですし、人格も素晴らしいですし、ウィンチェスター閣下もヤン提督は素晴らしい用兵家だ、って絶賛していらっしゃいますし、軍人として敬愛、いや尊敬…尊敬しているだけですが……どこがいいんだ、なんてそんな…」
むせたコニャックの飛び散ったテーブルを拭きながら、新しく二杯目を作ろうとして…溢してしまった中尉は、真っ赤になって俯いてしまった…。
「…閣下には、言わないでくださいますか」
「当然さ。人の恋路を邪魔する奴は、
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