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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
激闘編
第八十九話 ヴィーレンシュタイン追撃戦
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る。俺の指示は及第点という事だな。
「敵の前進は止まった…しばらく状況は変化しないだろう。参謀長、機を見て宙雷艦を下げてくれ。三十分程指揮を頼む」
提督はそう言うと艦橋を後にした。艦橋に残っているのは俺とシュナイダー少佐の二人だけだ。
「いつ見ても閣下の宙雷艇の運用は見事だな、シュナイダー。そうは思わないか」
「はい。小官は他の提督の方々にお仕えした事はありませんが、艦隊運用において、小型艦艇による近接戦闘法の実施についてはメルカッツ閣下が帝国軍随一ではないか…と思っています」
提督を支えて来た自負もあるのだろう、少佐は我が事の様に破顔した。
「そうだな…閣下の様に宙雷艇を多数運用するお方は珍しい。母艦も改装しなくてはならんし、空戦隊の編制も変えねばならんからな」
「母艦を改装…ですか?」
単座戦闘艇(ワルキューレ)の母艦があるだろう?宙雷艇を多数運用するには母艦を改装して、宙雷艇の専用母艦にせねばならない。となると母艦には単座戦闘艇を搭載出来なくなるから、替わりに戦闘艇を搭載するのは戦艦や巡航艦という事になる。そうすると空戦隊は分散配置が前提になって彼等の運用効率が下がる。それに、単座戦闘艇は空間戦闘から大気圏内戦闘まで万能にこなすが、宙雷艇は空間戦闘しか行えない。単一任務しかこなせない宙雷艇の為に専用母艦を揃えるくらいなら、汎用性のある単座戦闘艇を多数揃えた方が効率的だ、という事になるのさ。母艦を改装しても、搭載出来る宙雷艇は単座戦闘艇を搭載した場合の半分以下だからな」
「そうなのですか…気付きませんでした」
「閣下もその事はご存知だろう。だが閣下はこれまで辺境警備の任務が多かった。辺境警備では武装商船や海賊を相手にする事が多いし、惑星降下などの大気圏内戦闘は稀だから、単座戦闘艇より確実に相手を沈める事の出来る宙雷艇の方を好まれたのだろう」
「成程…」
「単座戦闘艇を艦隊防空に専念させるという事でいいのなら、戦艦や巡航艦への搭載で充分だからな。それに…」
「それに?」
「戦闘艇乗りの連中は、対艦戦闘より戦闘艇同士の空戦の方がお好みだろうしな」
「それは…言えてますね」
「それはそうとしてだ、ミューゼル提督が間に合えばよいのだが。条件さえ揃えば理想的な挟撃になる筈だ」
「敵が…ウィンチェスターが此方の意図に気付いていなければよいのですが」
「…そうだな、無事辿り着いてくれる事を祈るよ」



10月3日02:00
ボーデン宙域、ボーデン星系外縁部(アムリッツァ方向)、自由惑星同盟軍、第十三艦隊旗艦ヒューベリオン、
ヤン・ウェンリー

 ”貴官の言う事は尤もだ。だがわざわざミュッケンベルガーが出馬しているのだ。彼を倒すか降伏に追い込めば、帝国軍どころか帝国そのものにヒビを入れる事が出来る。これはチャンス
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