第二章
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「ちょっとね」
「ちょっと?」
「うん、まあね」
「言いにくいんじゃのう、本当に」
「そうなの。だからね」
「別に悪いことじゃないんじゃな」
浩二は明子の横顔を見て問うた。明子は今は正面を向いている。
その明子の横顔を見てこう問うたのである。
「それならじゃ」
「言わなくてもいいの?」
「ええわ。悪いことじゃないんじゃったらな」
それならだというのだ。
「別にええわ。それじゃあこれからな」
「これからって?」
「何か食いに行かんか?」
気落ちしている明子の機嫌をなおさせる為の言葉だった。
「何かな」
「じゃあ。広島焼きとか」
「お好み焼きな」
このポイントは訂正させる浩二だった。彼にとってお好み焼きとは広島のものだ。大阪のものは大阪焼きと呼んでいるのだ。
「そう呼んでくれると嬉しいのう」
「そっちがお好み焼きなのね」
「まあそれ食って元気になるんじゃ」
そのお好み焼きをだというのだ。
「そうしたらどうじゃ」
「そうね。それじゃあ」
明子も浩二のその言葉に頷く。そうしてだった。
彼の気持ちを受け入れてその広島風のお好み焼き屋に入った。この日はこれで気持ちをとりなおした。しかしだった。
数日経ってのお昼の時にだ。クラスで何人かの女友達と一緒にお昼を食べていた。そこでこうその友人達に言われた。
「明子ってお昼かなりの確率でそれよね」
「お握りよね」
「お握り本当に好きよね」
「いつも食べてるわよね」
「好きだから」
それでだというのだ。明子はそのお握りを手にして話す。
「というか一日一回は食べないと」
「駄目なのね」
「お握りを食べないと」
「そうなのよ。それにお握りってね」
にこにことそのお握りを食べながら友人達にさらに言う。
「中に色々入れられるじゃない」
「まあそうよね」
「梅干とかおかかとかタラコとかね」
「色々あるわよね」
「色々入れられるわよね」
「それに五目とか麦もあるじゃない」
明子はそうしたお握りも好きだった。
「ハンバーガーみたいにしたりとか」
「そういうのも食べてるわよね」
「とにかくバリエーションもあるからなのね」
「そう。お握り大好きなの」
言いながらさらにお握りを食べていく。だがここで。
そのお握りを落としてしまった。口元からぽろりとやってしまった。
普通はこれで童話か童謡の様に転がる筈だった。しかし。
そのお握りは明子の胸の上に落ちた。そこで止まったのだ。
皆それを見てまずは目が点になった。それからすぐに呆れた様な感心した様な笑みになってこうそれぞれ言った。
「何ていうかね」
「漫画みたいね」
「落としたものを胸でキャッチするって」
「もう何、それ」
「そんなに大きいの?明子の胸
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