第一章
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大きいだけじゃない
池田明子の顔立ちは可愛い。黒いショートヘアに猫を思わせる大きくよく動く目を持っている。その目はやや吊り目だ。
鼻はやや小鼻であり口元は少し悪戯っぽい感じに微笑んでいる。頬はふっくらとした感じである。そして何よりも。
胸が大きい。高校のクラスメイト達はいつもその胸を見て言う。
「いや、凄いわね」
「スタイル全体的にいいけど」
「胸大きいわね」
「滅茶苦茶羨ましいけれど」
「そう言われるとちょっと」
明子はそうした言葉にいつも気恥ずかしそうに返す。ピンクが主体でブラウスだけが白の制服からは確かに胸が目立つ。ミニスカートやブレザーと同じくピンクのネクタイを挟まんばかりの大きさである。
その見事な胸を見て誰もが言うのだ。
「いや、ちょっとじゃないから」
「一体幾つあるのよ」
「Dカップっていうけれど実際はDじゃないでしょ」
「もっとあるわよね」
「あるかな」
サイズを言うことはできなかった。明子は案外大人しい性格でこうしたことはどうにも言えないのだ。それでなのだ。
しかし周囲はまだ言う。明子のその胸を見て。
「羨ましいわね」
「うちの学校でも一番じゃないの?」
「女は胸からはじまる」
「乳こそ全てよ」
こうした極端な言葉も出る。とにかく彼の胸は大きい。そしてだった。
明子には彼氏がいた。陶浩二という。広島生まれで中学の時に明子のいる神戸市長田区の八条町に引越してきた。中々男らしい顔で眉は太い。そして目が細く全体的に細長い顔立ちをしている。背はかなり高い。学生服はグレーの詰襟だ。普通の黒ではない。
その彼がいつも明子を見て言う。広島弁で。
「明子ちゃんいい娘じゃけえな」
「何かそう言われると」
「んっ?何かあるんかのう」
「怖いけれど」
苦笑いで彼の広島弁に対して言う。
「ヤクザ屋さんみたいで」
「ああ、わしは広島弁じゃけえのう」
それもかなりの訛りだ。
「わしは呉出身じゃけえのう」
「あの軍港のあった町よね」
「そんで鶴岡さんや広岡さんの出身地じゃ」
話題は野球のものになった。広島は球団もあるが高校野球も強い。
「ええところじゃ」
「そうよね。けれど」
「言葉じゃのう」
「やっぱり広島じゃこれが普通よね」
「ああ、そうじゃ」
浩二は自分の言葉が普通だと確信していた。
「じゃからこうしてな」
「喋ってるのよね」
「そういうことじゃ。広島じゃ女の子もこれが普通じゃ」
「仁義なき戦いみたいだけれど」
「ははは、そのままじゃのう」
これは浩二も否定しない。下校中のデートで横にいる明子に笑って言う。
「わしの言葉はほんまにそのままじゃな」
「最初何かって思ったけれど」
明子は小
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