暁 〜小説投稿サイト〜
冥王来訪
第三部 1979年
迷走する西ドイツ
脱出行 その2
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・第9国境警備群――通称:GSG−9――。
1972年のミュンヘンオリンピックのテロ事件を受けて、国境警備隊内に設置された特別機動隊の通商である。
 なお、東ドイツでもミュンヘン事件を受けて、1972年に人民警察内に特別第9中隊という機動隊を設置することとなった。
こうして、ドイツ国民にとって第9機動隊と言えば、特殊部隊の通称となったのだ。

 サイレンを消した状態で、数台のパトカーがレストランの前に停車した。
GSG-9の隊長は、無線越しに本部に連絡を入れる。
「現場に着きました」
「拳銃を持っている。気を付けろ」
「了解!」
 シュタールヘルムに深緑の制服を着て、MP5機関銃で武装した一群が、店の周囲をぐるりと囲む。
店は、マサキたちの他には誰もいなかった。
 遅い時間帯もあろう。
 外は、(うるし)の様に真っ暗闇だ。
人の姿など全く見えない。
足をする音であろう、シュッシュッという音が聞こえてくる。
 マサキは、直感的に、意識を外に向けた。
その途端、彼はピタッと釘付けされたように、動かなくなってしまった。
「どうしたの」
「不吉な予感がする」
 間もなく、どこか遠くで意味は分からないが異様な叫び声が、闇を縫って響いてくる。
しかも、その声は一人や二人ではない。
何か切迫した様子で、不思議な胸騒ぎを感じさせるものであった。
 様々な暗殺経験を潜り抜けてきたマサキには、物々しくあわただしい雰囲気が何か、理解できた。
「どうして、ここが?」
 そう言いながらマサキは素早くしゃがむと、キルケの手を引っ張って自分と同じ状態にさせた。
その直後、吶喊の声に入り混じって、激しい銃声とともに、雨霰と10発以上の銃弾が降り注ぐ。
「今のは、生きているものがいないかの、挨拶だ。
次は、乗り込んでくるッ」
 キルケは、思わず床にうつ伏せてしまった。
生れてからこの年まで、こんな怖いと思ったことはまだなかった。
自分の位置を(さと)られる(おそ)れさえなかったら、声をあげて泣き出したかも知れなかった。
「ど、どうするの?」
 泣き出しそうなキルケを、マサキは宥めた。
やさしく抱くようにして、体を密着させる。
「フフフフ、国境警備隊の連中がやろうとしていたことをやるのさ。
俺の遊びに、仲良く付き合ってもらうぜ」
 
 間もなく、ラインメタルMG3機関銃が車より降ろされて、地面に据え付けられる。
全員に、油紙に包まれた銃弾が配られる。
「射撃準備!」
 短機関銃には新たな弾倉が組み込まれ、回転拳銃には銃弾が込められる。
G3小銃を持った隊員は、それぞれ引き金に指を添えた。
「木原が生きている可能性もある。
慎重に、ジグザグに行けッ!」
 あとは号令を待つばかりだ。
そして、命令はつ
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