第三部 1979年
迷走する西ドイツ
脱出行 その2
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この世界では、地方領主やユンカーの力を借りて、西ドイツの建国を達成した結果だからである。
そうした経緯から、彼らはワイマール共和国や第三帝国時代と違って、厚遇されることとなった。
ソ連が東ドイツ地域でのユンカー層への大弾圧への対抗措置という面もあった。
ソ連占領軍とKGBは、ユンカー層をシベリア送りにし、その邸宅をブルドーザーで破壊した。
そのことも、西ドイツ側の態度をより、貴族層への同情を強める一旦となった。
マサキは、元の世界との違いをまざまざと見せつけられる気がした。
元の世界の統一ドイツ政府は、ユンカーに非常に冷たかった。
ドイツ統一後、1991年に締結したドイツ最終規約を根拠に、ユンカー層の訴えを棄却する。
ソ連による暴力的な農地解放を追認し、ユンカー層の名誉回復を拒否した。
2009年にハノーファー公の訴訟が敗訴すると、そうした動きは一斉に立ち消えした。
「お前の友人なんだが……」
「本名は、ドリス・ツー・ザイン=ヴィトゲンシュタイン=ザイン……
ドリスは、私が訓練校にいる時に知り合った地方領主の末裔よ。
ナポレオン戦争で活躍したロシアの将軍、ピョートル・ヴィトゲンシュテインの男系子孫。
怪しい身分の人じゃないの。
義理堅い人物で、信頼できる人だわ」
一旦、ミュンヘンの日本総領事館に向かう事となった鎧衣と別れたマサキ達。
彼等は、高速道路ではなく、一般道を経由して、ベンドルフへ急いだ。
やっとの思いで、ベンドルフの手前、マインツにたどり着いたときは既に日没後であった。
レストランで遅い昼食をとることにしたのだ。
三十分もしないうちに、レストランへ電話が入った。
店の主人が、受話器を取った。
「国境警備隊、第9国境警備群のものだ。
アジア系の若い男で、20歳前後。
それに小柄な女の2人連れを探しているんだが……」
「はあ……」
「女は、ドイツ人で無理やり誘拐されていると思う。
見かけたら、連絡してくれ」
「それらしい2人連れなら……」
「いんのかい?」
「男1人に、女1人で……」
「よしッ、今すぐ行くッ」
村落の入り口には、明るい緑色の塗装がされた数台の装甲車があった。
ティッセン・ヘンシェル(今日のラインメタル・ランドシステムズ)のTM-170装甲兵員輸送車で、国境警備隊の物であった。
ドイツでは、1919年から2012年まで、文民警察官の制服の色は明るい緑色だった。
これは帝政時代の文民警察の色である紺色を否定するために、ワイマール共和国が始めた措置である。
第三帝国、東西ドイツ、統一ドイツでも同じ措置が取られた。
だが、EU域内の司法警察間の制服の色が紺色と決められたため、2012年以降は帝政時代の濃紺に戻すこととなった。
国境警備隊
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