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冥王来訪
第三部 1979年
迷走する西ドイツ
脱出行 その1
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は、殿下のお言葉とは思えませぬ。
連邦政府の職員が、どうして友邦の日本に弓引きましょうか!
それに、ドイツ連邦軍は木原博士の件を通じて、帝国陸海軍に全面的に協力をしている所存です。
その連邦政府の名を名乗るものは、不届き千万!
お許しを賜りますならば、連邦政府の方で、処断いたします」

「ほほう、西ドイツの手で成敗を!」

百篇(ひゃっぺん)の言葉をもって釈明するよりも、そのほうが連邦政府の潔白を証明する事ともなります。
また当然の事かと」

「西ドイツを代表する駐箚大使のおことがそう申されるのも、無理からぬところ。
よかろう、存分になされい」

「ありがたき幸せに、存じ上げまする」
大使と将軍の面会は、問題なく終わった。
 

 西ドイツ情勢が急を要することは、帝都にある官衙にまで伝わっていた。
国防省の大臣室に急遽呼ばれていた榊と彩峰たち一行は、大臣から詳しい説明を受けている最中であった。
「木原の救出だが……
行動するなら、慎重にやれ」
たまりかねた様子で、彩峰は、われから進んで大臣へ訊ねた。
「どういうことです」
「……いくら経済的に好調でも、いきなりこんなことをするはずがない。
裏を調べていたら、とんでもない黒幕がいることが分かってきた」
 驚いたらしい。
政務次官の榊は、さらに凝視していた。
「黒幕!!、西ドイツ政界に?」
「ビルダーバーグ会議といえばわかるか……」
 大臣は、淡々と一同へ打明けていた。
彩峰たちの眉色もただならぬものを現わしたが、大臣もまた、一瞬、瞑目していた。
「こ、国際金融資本」
愕然(がくぜん)と出た一語には、まったく予測も夢想もしていなかった驚き方が、余すところなく現われていた。
「それじゃあ、西ドイツのごたごたの裏には、国際金融資本が……」
「ああ……御剣閣下の情報だ。
間違いは、ないだろう」
その言葉が、幕僚の(おもて)に、さっと凄気(せいき)をながした。
「狙いは木原だけではあるまい」
彩峰は、聞き終るとともに、天井を仰いで長嘆した。
「ああ……」
彩峰は、そして、当然のように、独りこう答えていた。
「一週間後には東京サミットなのに……まてなかったのか」
 期せずして、彩峰の口から沈痛な問いが出た。
そして、この危機を如何に処すか。
 大臣の顔から読もうとするもののように皆、一点に凝視をあつめた。
大臣は、そのとき言った。
「いずれにせよ、ゼオライマーは渡せん。
榊君、彩峰大尉、この件は君たちの自由にやり給え」
 命をうけた幕僚たちは、大臣の前を辞して、飛ぶが如く、各自の職場へ駈け出してゆくのだった。
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