第四章
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「後はな」
「ケーキは?」
「純情な子だからな」
百合子の気持ちにあえて気付いていないふりをして言う。
「手作りデコレーションだな」
「手作りの」
「俺も好きだからな」
百合子には賄賂はさりげなく要求した。
「チョコレートな」
「隆一君は?」
「フルーツが好きみたいだな」
ここでもさりげなく言うマスターだった。
「あれを一番美味そうに食うからな」
「そう、フルーツね」
「それだろ。あの子そろそろ旅行に行くよな」
「二日後ね」
もう目前だ。そしてその旅行に行く間にだった。
「ケーキなら作られるから」
「ああ、ビールもう一本いいか?」
マスターは妹には気付いていないふりをしてこれを尋ねた。
「飲んでいいか?」
「駄目よ。今何本目よ」
「五〇〇を六本目だったな」
「飲み過ぎよ。ビールって痛風になるのに」
百合子はこのことは厳しく兄に言う。
「そんなに飲んだら」
「駄目か」
「そう。今だけじゃなくて」
百合子はさらに言う。
「これからもよ」
「ビールは控えろっていうんだな」
「別の飲んで」
飲むことは止めないがそれでもだというのだ。
「そうしてね」
「じゃあ今日はこれで止めてか」
「三リットルも飲めば充分過ぎるでしょ」
「充分か」
「本当に痛風になるわよ」
百合子は真剣な顔で兄に注意した。
「相当痛いらしいから」
「じゃあ今度からhノンとうに焼酎にするか」
「それかワインね」
飲むのならというのだ。
「それと飲む量も抑えないと」
「休肝日も置くか」
「お酒は怖いから」
「薬にもなれば毒にもなるからな」
百薬の長というがそれと共に百毒の長と言ってもいい、酒は溺れると身の破滅に至る恐ろしいものでもあるのだ。
だから百合子もこう兄に言う。
「気をつけてね」
「わかったさ。とにかくな」
「隆一君のこと?」
「真面目に働いてもらってるからな」
マスターにとって彼は真面目で誠実なアルバイターだ。信頼もしている。
「卒業と入学祝いにな」
「プレゼントね」
「本当にケーキどうだ?」
何気なくを装って百合子に言う。
「手作りのな。それと」
「それと?」
「メッセージも添えてな」
このことをあえて言い加えた。
「そうしたらどうだ?」
「メッセージって」
「まあその辺りは考えてな」
あえて多くを言わず百合子を煽るのだった。
「やってみればいいだろ」
「考えて」
「ああ、そうしたらどうだろうな」
「そうね。卒業祝いで」
百合子は気付かないうちに兄の煽りに乗った。そしてだった。
百合子はこっそりと用意に入った。兄に気付かれない様にしていたが見られていることには気付いていなかった。
隆一はハウステンボスや長崎で
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