第三章
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「それ位ですよね」
「おいおい、評価高いな」
「そうですか?」
「うん、高いよ」
マスターは今度は少し苦笑いめいた笑顔を作っていた。
「そこまで言うのなら余計にだよ」
「アタックですか」
「卒業と入学の祝いにハウステンボス行くんだよな」
「はい、長崎に」
「そうか。俺にはカステラな」
マスターは笑って自分の欲しいものを催促する。
「それ頼むな」
「賄賂・・・・・・じゃないですよね」
「ははは、それは言わない約束だな」
「ですか」
「蜂蜜のカステラも抹茶のものも大好きなんだよ」
しかも賄賂は一つではなかった。
「いや、いいよな」
「わかりました」
「百合子は中華街の縁起ものにハウステンボスだとな」
百合子についてはというのだ。
「扇好きだな」
「扇ですか」
「ああ、あそこだと扇だよ」
そうなるというのだ。
「西洋風の扇が好きなんだよ」
「じゃあそれと」
「ガラス細工のものも好きでな」
マスターは賄賂の約束を得たので隆一に親身に話す。
「奇麗なのをプレゼントするんだよ。それでな」
「それで?」
「その瞬間だよ」
マスターの目が光った。不敵な、にやりとした光だった。
「言えばいいからな」
「言うって何を」
「最後まで言うことないだろ。じゃあいいな」
「わかりました。じゃあ」
「大丈夫だ。俺の見立てだとな」
今度は隆一を上から下まで見て言うマスターだった。
「隆一君と百合子はいけるな」
「いけますか」
「相性がいいっていう以前にな」
無意識のうちに彼の手の三つ連なった黒子も見る。
「運命的なものがあるんじゃないのか?」
「運命的、ですか」
「それがあるんじゃないのか?」
こう隆一に言うのだった。
「そんな気がするけれどな」
「そうなんですか」
「まあ行け、当たって適えろだよ」
マスターは隆一にまたこの言葉を告げた。
「気合入れていけよ」
「わかりました」
隆一はマスターの煽りを受けてそのうえで旅行に向かった。マスターは彼に対してだけでなく百合子にもだ。
仕事の後に店と一緒になっている家の奥でソファーに座りテレビを観ながらビールを飲みながら家の台所で自分達の食器を洗っている百合子に言うのだった。
「なあ、隆一君な」
「どうしたの?」
「聞いた話じゃ結構もてるらしいな」
台所で家の仕事をしている百合子を見ずに言う。
「何でもな」
「えっ、そうなの」
「ああ、そうらしいな」
百合子の声が上ずっていた。しかしそれはあえて見ないでさらに言う。
「それで告白とかしようっていう娘も多いらしいな」
「ふうん、そうなのね」
「それでな。あの子の好きなものって知ってるか?」
「何なの?」
マスターは見ていないがわかって
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