第二章
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「隆一君が楽しまなくてどうするのよ」
「だからですか」
「そう。だから楽しんできて」
あくまで彼自身がそうしろというのだ。
「それに一人では行かないわよね」
「同じ学校の連中と何人かで」
隆一は百合子の今の問いに素直に答えた。
「そのつもりです」
「だったら余計によ」
「僕自身の為にですか」
「そう。楽しんできて」
こう笑顔で彼に言う百合子だった。
「そうしてきてね」
「それじゃあ」
「ええ、それじゃあね」
二人は今も仲がよかった。むしろその間は狭まっていた。隆一がこの店でアルバイトをはじめて二年目になっていた、それで関係はより親密なものになっていたのだ。
店が終わってからマスターもこう隆一に言う。今百合子は店の奥で明日の準備をしている、二人は店の掃除をしているのだ。
その掃除をしながらマスターはこう隆一に言ったのである。
「百合子とはもうしたかい?」
「えっ?したって」
「だからあれだよ」
マスターは髭だらけの顔をにこにことさせて自分の言葉に驚く隆一にさらに言う。
「男女交際のな」
「そんなのないですよ」
「おいおい、もう二年目なのかい?」
「というか何でそんな話になるんですか」
「何でって。兄貴の俺が公認なんだぞ」
マスターは隆一にこうも言った。
「好きなだけ進んでいいからな」
「僕達そんな」
「じゃあ百合子のこと嫌いかい?」
マスターは今妹がこの場にいないことをいいことにはっきりと問うた。
「あいつのことは」
「僕嫌いな人とは話しませんから」
隆一は答えを返した。
「それは」
「だろ?じゃあ好きだな」
「まあそれは」
「好きだったら進むんだよ」
背中を押すというより煽るといった感じの言葉だった。
「だったらいいよな」
「いいよなって」
「男は前に出るものなんだよ」
「自分からですか」
「そうだよ。だからいいな」
「百合子さんに」
「当たって砕けろとは言わないからな」
日系人部隊とはそこが違うというのだ。
「恋愛は適えてこそなんだよ」
「あの、ですから僕は」
「わかってるからな」
もう隆一の本心は見抜いているというのだ。実際にその通りだった。
「それで百合子もな」
「百合子さんも?」
「まあそれは言わないでおくか」
思うことがありそこは隠したのだった。
「とにかく当たって適えろ」
「砕けるんじゃなくて」
「一回駄目でも何度でもだよ」
アタックして最終的にはというのだ。
「やるんだよ」
「随分前向きですね」
「後ろを見ていて前を進めるかい?」
マスターは随分と道徳的なことも言う。
「できないよな」
「はい、それは」
「じゃあ前向きにだよ」
マスターはその髭だらけの顔を微笑まさせてそのうえで
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