第一章
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有能な人材を追い出すと
名古屋に生まれた頃から暮らしている津野佐喜夫はもう九十歳になる、皺だらけの顔で髪の毛も殆どなくなっている。だが背中はまだしっかりしていて動きもだ。
その彼が今喫茶店のカウンターでマスターに言っていた。
「ドラゴンズが出来た頃から応援してるが」
「戦前からだね」
「戦争に行ってもな」
四十代でオールバックが似合う黒髪のマスターに話した。
「気になって仕方なかった」
「爺さんそうだったんだな」
「それでずっと。今もな」
「ドラゴンズ観てるんだよな」
「応援している、しかしな」
「今調子悪いなドラゴンズ」
「二年連続最下位だ」
そうなったことをだ、老人はコーヒーを飲みつつ言った。
「今年もな」
「よかったんだけどな、最初は」
「オープン戦と序盤はな」
「いけると思ったよ」
マスターは残念そうに言った。
「今年こそは」
「いや、こうなるとな」
だが津野はこう返した。
「思っていた」
「落ちるとかい?」
「今年も下手したらな」
「最下位かい?」
「そうなるとな」
その様にというのだ。
「思っている」
「そうなのかい」
「今は駄目だ」
「身売りの話も出ているしな」
「それも当然だ、今のままじゃな」
「ドラゴンズは駄目か」
「戦争の時も含めてな」
この困難な衣というのだ。
「ドラゴンズは創設以来のピンチだな」
「そこまで酷いかい」
「わしがそう思う」
「創設から見ている爺さんが言うっていうと」
「わかるな」
「ああ、相当にな」
マスターもこう返した、モーニングが一段落ついた店の中は静かであり二人はその中で話をしているのだ。
「実際二年連続だからな」
「最下位はな」
「それじゃあな」
実際にというのだ。
「やばいな」
「そうだよな」
「それでも今年はいけると思ったと」
「最初よくてか」
「大勢選手獲得したしな」
「上林や中田をな」
「そうだと思ったよ」
マスターは残念そうに語った。
「本当に」
「わしは最初だけだと思っていた」
老人は無念の顔で述べた。
「それでこうなるとな」
「読んでいたんだな」
「そうだ」
「やっぱり監督にフロントか」
「そうだ、どっちもな」
マスターにまさにと答えた。
「問題だ」
「やっぱりそうか」
「どっちも選手の起用や待遇に問題あるな」
「出来る人をどうしてるのか」
老人は忌々し気に言った。
「そこじゃ」
「ああ、人事か」
「フロントも監督もな」
「実際かなり酷いな」
「今の中日が落ち目なのはな」
マスターはそれがどうしてかを言った。
「落合さんクビにしてな」
「それからだな」
「あれだけ凄い人をな」
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