激闘編
第八十八話 国境会戦(後)
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ュッケンベルガー司令長官だからこそ、皆この命令に従うのかもしれない…。
「敵の攻撃に対して、此方も反撃する。その反撃しているという事実に安堵するものなのだ、普通はな。しかしこれは…」
「ああ。その通りだ。司令長官は味方に対して問うておられるのだろう。帝国軍人の矜持を」
私とメックリンガーは思わずミュッケンベルガー司令長官を見ていた。長官の表情は、行動開始前となんら変わる事がない。宇宙艦隊司令長官を務めるというのはこういう事なのか……。
「全艦、砲撃戦用意」
再び間違えようのない予令が発せられた。司令長官の右手が上がる。
「撃て」
10月2日15:50
自由惑星同盟軍、アムリッツァ方面軍総旗艦ペルクーナス、
ドワイド・D・グリーンヒル
再開された戦闘は苛烈だった。帝国軍は発砲する事なく距離を詰めて来た。長距離砲で攻撃を開始したが、ミュッケンベルガーの直衛艦隊、その両脇を固めるゼークト、シュトックハウゼンの両艦隊が此方の攻撃に屈する事なく此方に向かって来た。当然それなりの損害を帝国艦隊には与えているのだが、彼等は臆する事が無かった。攻撃を仕掛けて来る事もなくただ前進するのみの帝国艦隊に戸惑った…いや、恐怖したのだろう、まず第二艦隊の前衛がじりじりと後退を始めてしまったのだ。帝国艦隊が我々への攻撃を開始したのは一光秒以下の極至近距離になってからだった。帝国艦隊は斉射しながら更に前進、空戦隊を投入してきた。戦闘開始後の二日間が嘘の様な総力戦だった。此方の中央部も空戦隊を出して対処しているのだが、初動で帝国艦隊の無言の圧力に呑まれた影響は大きかった。第一艦隊は踏みとどまったものの第二艦隊が下がれば当然第一艦隊も下がらざるを得ず、戦線は徐々に後退していった。戦闘再開して一時間後には第二艦隊の前衛は既に崩壊寸前になっており、第二艦隊の援護に回る第一艦隊を援護する為に第三艦隊が、第二艦隊を外側から援護する為に左翼の第四艦隊が戦線参加せざるを得ない状況になっていた。
「こういう状況になる事は想定はしていましたが…入り方が悪かった。あんな攻め手は想像出来ません」
「流石は帝国軍の宇宙艦隊司令長官、というべきだろうな。我が軍ではあんな攻め方は出来んだろう。だが、この戦いを生き残った帝国軍の将兵は正に精鋭といった存在になるだろうな」
「はい、残念な事ですが…。チュン提督の第十艦隊ですが、如何なさいますか。現在の状況から察するに帝国艦隊の両翼…シュムーデ、ギースラーが戦線参加する事は間違いありません、我々の両翼側面から攻撃し、我々を半包囲体勢に置こうとするでしょう」
前衛四個艦隊のすぐ後方には、増援として到着したチュン中将の第十艦隊が予備として待機している。彼等が到着したのは昨日の昼頃だった。もう一日到着が早ければ、此方
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